ベトナムで使用する日本文書の認証手続き―公文書・私文書のアポスティーユ認証の流れ
2026/09/28
- I-GLOCAL.CO.,LTD ハノイ事務所
- 公認不正検査士
- 鹿島妃里子
エグゼクティブサマリー
① 制度変更の概要 — ベトナムは2026年9月11日にアポスティーユ条約の締約国となった(政令第293/2026/ND-CP号)。これにより、日本を含む締約国でアポスティーユ認証を取得した文書は、ベトナムでの使用時に従来必要だった領事認証が原則不要となった。
② 対象文書と使用シーン — 対象は日本の官公署発行の公文書と、所定の公証手続を経た私文書。労働許可証申請、ベトナム法人の設立・増資、投資に係るM&A等の場面で認証が必要となる。
③ 公文書と私文書で異なる手続 — 公文書は外務省でのアポスティーユ認証申請のみで完了。私文書は公証役場での公証→法務局での公証人押印証明→外務省での認証という3段階が必要となる。
④ ワンストップサービス — 公証役場・法務局・外務省の手続を公証役場1か所でまとめて行える制度で、最短1日で完了可能。対応地域は8都道府県(2026年9月時点)。
⑤ 実務上の留意点 — アポスティーユは翻訳を証明するものではなく、ベトナム語訳は別途手配が必要。書類は「原本→宣言書→委任状」の日付順序を守り、原本の完全性(ホッチキス・封筒・マーキング)を損なわないよう注意する。
1. 領事認証とは
ベトナム政府は、2026年7月23日付で政令第293/2026/ND-CP号を公布し、同年9月11日付で「外国公文書の認証を不要とする条約」(アポスティーユ条約)の締約国となった。これにより、日本を含む締約国でアポスティーユ認証を取得した文書については、ベトナム国内で使用する際、従来必要とされていたベトナム大使館・領事館による領事認証が原則として不要となった。
アポスティーユ認証の対象となるのは、日本の官公署が発行した公文書、および所定の公証手続を経た会社・個人作成の私文書である。必要な認証を受けていない外国発行文書は、認証が免除される場合を除き、ベトナム当局における各種手続で受理されない可能性がある。
なお、書類によっては日本またはベトナムのいずれかで手続を行うことができる場合もあるが、本稿では、日本におけるアポスティーユ認証手続に限定して説明する。
主な使用シーン
以下のような場合に、日本の書類に対する領事認証が必要となる。
● ベトナムでの就労・労働許可証申請
● ベトナム法人の設立手続き
● ベトナム法人の増資手続き
● ベトナムへの投資に係るM&A手続き
※ 具体的にどの書類に認証が必要かどうかは、法令を確認のうえ、書類を提出するベトナム側の機関に事前に確認することことが望ましい。
2. 公文書と私文書の違い
書類の種類によって認証手続の流れが異なるため、まず、提出する書類が「公文書」と「私文書」のいずれに該当するかを確認する必要がある。主な書類の例は、以下のとおりである。
公文書(公的機関が発行) : 登記簿謄本、印鑑証明書、居住者証明書、無犯罪証明書等
私文書(会社や個人が発行):パスポートのコピー(私文書として扱われる場合)、委任状、任命状、在籍証明書、健康診断書、銀行残高証明書等
※ 大学卒業証明書を公文書と私文書のいずれとして扱うかについては、ベトナム当局の解釈に地域差があるため、アポスティーユ認証の実施前に事前確認を行うことが望ましい。
3. 手続きの流れと必要書類
3.1 アポスティーユ認証手続きの流れ
書類の種類により、必要となる手続きは異なる。公文書については、外務省におけるアポスティーユ認証の申請のみで手続きが完了する。一方、私文書については、公証役場での公証手続き、法務局での公証人押印証明、外務省でのアポスティーユ認証という3段階の手続きが必要となる。
<アポスティーユ認証を取得するまでの流れ>
⚡ ワンストップサービス
公証役場・法務局・外務省までのステップを公証役場1か所でまとめて手続きできるサービスである。本サービスを利用することで大幅な時間短縮が可能となる。
現在、ワンストップサービスを利用できる対応地域は以下の通りである。(2026年9月時点)
北海道(札幌法務局管区内)、宮城県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、福岡県
※ 最新の対応地域は、本稿下部に記載の外務省ホームページを参照のこと。
3.2 必要書類と費用
公文書と私文書では、アポスティーユ認証に必要な書類および費用が異なる。主な内容は、以下のとおりである。

アポスティーユ認証は、文書の翻訳を証明するものではないため、ベトナム語訳の要否および必要な翻訳公証の方法については、提出先機関の要件を別途確認する必要がある。なお、アポスティーユ認証取得後、翻訳のみを目的として在日ベトナム大使館・領事館で手続を行うことは、原則として想定されていない。ベトナム語訳の対応については、自社で翻訳を行うか、翻訳会社等のサービス提供者へ依頼する必要がある。
4. よくある質問
Q:公文書を私文書化するとは?そのメリットは?
A:外務省でアポスティーユ認証を受ける場合、郵送申請では書類の発送・返送に日数を要するため、手続き完了までに時間がかかる。
一方、外務省の窓口へ出向く時間がない場合には、公文書に宣言書を添付して私文書として公証を受ける方法がある。この方法では、ワンストップサービスに対応している公証役場を利用することで、公証役場・法務局・外務省で必要となる手続きを一括して行うことができる。これにより、複数の書類について同じ手順で手続きを進めることができ、最短1日で完了させることも可能となる。
※外務省でのアポスティーユ認証自体には手数料は発生しない。ただし、公文書に宣言書を添付して私文書として公証を受ける場合には、私文書と同様に公証役場での手数料が発生する。
Q:書類準備時の失敗事例は?
A1:書類作成の流れとしては、原本⇒宣言書⇒委任状の順番となるので、宣言書および委任状上の日付を公証書類原本の発行または取得日以降の日付とするよう注意する。宣言書の日付が原本発行よりも前になっていると、内容に矛盾があるとされて無効になってしまう。不安な場合は、空欄にしておいて公証手続時に公証人の前で記入すると確実である。
A2:日本の官公署が発行した公文書については、上記フローのSTEP 1でアポスティーユ認証を申請する前に、書類の完全性が保たれている必要がある。原本からホッチキスを外したり、無犯罪証明書の封筒を開封したり、蛍光ペンでマーキングを行ったりしないよう留意する。書類の完全性が損なわれた場合、当該書類は無効となり、再取得が必要となる場合がある。
参考情報
外務省
・公印手続き:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html
・ワンストップサービス:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000607.html
駐日ベトナム大使館・領事館
領事認証に代わるアポスティーユ証明の適用に関するお知らせ:https://vnembassy-jp.org/ja/
駐日ベトナム大使館・領事館
政令第293/2026/ND-CP号(2026年9月11日施行)
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