Reportレポート

労働許可証の申請形態と税務上の影響について

2026/05/13

  • I-GLOCAL.CO.,LTD ハノイ事務所
  • Vu Thi Huong Giang

エグゼクティブサマリー

ベトナムで就労する外国人労働者(駐在員)の労働許可証には「労働契約の履行」と「企業内異動(DCNB)」の2形態があるが、2025年の法令整備により、申請形態と実態(給与支給の有無)を一致させることが強く求められるようになった。
主要ポイント
・【2形態の定義の明確化】内務省公文書第10861号(2025年11月)により、①ベトナム法人から給与を受領する外国人→「労働契約の履行」形態・労働契約締結・社会保険加入義務、②親会社からの派遣で給与を受領しない外国人→「企業内異動」形態・労働契約不要・社会保険加入不要、として区分が明確化された。
・【法人税リスクの所在】政令第320/2025/ND-CP号は企業内異動の任命状を有効な証憑として追加したが、内務省の解釈と整合していない。「企業内異動」形態で許可証を取得しながらベトナム法人が給与を支給した場合、当該給与が損金算入を否認されるリスクがある(下表ケース3)。
・【住宅費・子女学費】ベトナム法人が外国人労働者と労働契約を締結し、当該費用を明記したうえで証憑を整備した場合に限り、法人税の損金算入が認められる。
・【実務上の推奨対応】給与を支給するならば「労働契約の履行」形態で許可証を取得し、労働契約を締結する(社会保険加入義務が発生)。給与を支給しないならば「企業内異動」形態を維持し、労働契約を締結しない。形態と実態の不一致(ケース3)は避けることが最重要。

はじめに
多くの日系ベトナム法人は、「企業内異動」の形態により、海外の親会社から派遣された駐在員を受け入れている。一般的にはベトナム法人が駐在員の住宅費、生活手当、交通費、昼食手当、さらには給与の一部等の各種費用を支給するケースがほとんどである。これらの費用支給が、労働法上ならびに法人税上の損金算入として認められるかについて、労働行政機関による管理が近年厳格化する傾向にあるため、重要な検討課題となっている。本稿では、労働許可証の申請形態とそれらの税務上の取扱いを解説する。

1. 各業務形態に関する規定

2025年11月19日付 内務省公文書第10861/BNV-CVL号において、内務省は労働法に基づく労働関係および労働契約の本質に対する解釈と外国人労働者がベトナムで就労する際の労働許可証における各形態の相違点を明確化した。概要は以下のとおりである。

●ベトナム法人や組織にて就労し、かつベトナムで賃金を受ける外国人労働者の場合:
就労開始予定日の前に、使用者は当該外国人労働者について労働許可証の発給申請を行う必要がある。あわせて労働法令に基づき労働契約を締結し、社会保険法の規定に従いベトナムの社会保険に加入する義務がある。

●企業内異動の形態で派遣される外国人労働者の場合:
当該異動は、ベトナム国内に商業的プレゼンス(※)を設立している外国企業の内部における有期の人事異動であり、WTOにおけるベトナムのサービス約束表に規定された11のサービス分野の範囲内で行われるものとされている。また、当該外国人労働者は、派遣前に当該外国企業において少なくとも連続12か月以上雇用されていることが要件である。

(※)商業的プレゼンスには、外資系企業、外国企業のベトナムにおける駐在員事務所または支店、ならびに事業協力契約に基づく外国投資家の運営事務所が含まれる(政令219号第13条第13項b号に基づく)。

以上を踏まえると、労働法第45/2019/QH14号および外国人労働者のベトナム就労に関する関連ガイダンス文書に基づき、「ベトナム国内で賃金を受領する外国人労働者」のケースと「企業内異動により派遣される外国人労働者」のケースという2つの異なるケースに分類できる。

上記整理より、ベトナム国内で賃金を受領する外国人労働者は、ベトナム企業との間で労働関係が発生しているものとみなされる。労働法令に従い、ベトナム企業と労働契約を締結する必要があり、「労働契約の履行」を根拠とする労働許可証の申請形態が適用され、併せてベトナムにおける社会保険への加入業務が生じる。

一方で、「企業内異動」は親会社から一定期間ベトナムへ派遣される人事形態であり、ベトナム企業から賃金の支払を受けることを前提としない点で異なる。

2. 賃金、報酬に関する法人税の規定

現行の法人税に関する規定(2025年12月15日施行の政令第320/2025/ND-CP号)では、従業員に支払われる給与、賃金および給与性を有する各種手当については、以下の条件を満たす場合に限り、損金算入が認められる。

●実際に発生し、かつ生産・事業活動に関連していること
●法令の規定に従った、適正な請求書および証憑書類が備えられていること
●1回あたりの支払金額が5,000,000 VND以上の場合、非現金決済による支払証憑があること
●以下のいずれかの書類において、支給条件および支給水準が明確に規定されていること
 ・労働契約書、または外国企業が当該外国人をベトナムへ派遣する旨を記載した書面(外国人労働者がグループ内、すなわち親会社と子会社間での異動または企業内異動の場合に適用)
 ・団体労働協約
 ・企業の財務規程、賞与規程

外国人労働者の住宅費・子女学費(ベトナムの幼稚園から高等学校まで就学するための学費)については、ベトナム法人が外国人労働者と労働契約を締結し、労働契約書内でこれらの支給が明記され、かつ証憑書類が備えられていれば、法人税の損金算入が認められる。

一方で、政令第320/2025/NĐ-CP号では、企業内異動の場合における外国人労働者の派遣文書(いわゆる任命状)が、税務上の有効な証憑として追加された。しかし、この点は、内務省による解釈および案内(ガイダンス)と一致していない。

したがって、企業内異動となる外国人労働者に対してベトナム法人が給与を支払い、かつ任命状に支給条件および支給額を明記している場合であっても、当該支払いが労働法上の関連規定に適合していないと判断された場合、法人税上、損金算入として認められないリスクが残ることになる。

3. 結論および提言

現行法令ならびに関係当局の見解・運用動向を踏まえ、企業内異動となる外国人労働者に対する賃金、報酬および各種福利厚生費用に関するリスクについて、以下のとおり整理できる。

上記の整理に基づき、労働面および税務面の双方におけるリスクを軽減するため、企業は外国人労働者の労働許可証申請時に適切な勤務形態を見直し・選択することが望ましい。

したがって、これまでのように「企業内異動」の形態で労働許可証を申請する場合、今後は当該外国人労働者とは労働契約を締結せず、ベトナム法人から給与を支給しない運用が適切である。

一方、企業が外国人労働者に給与を支給する場合には、「労働契約の履行」の形態で労働許可証を申請し、これに対応する労働契約を締結する必要がある。この場合、当該外国人労働者はベトナムにおいて強制社会保険および強制医療保険の加入対象となる点に留意が必要である。

おわりに
以上、労働許可証の申請形態とそれらの税務上の取扱いについて解説した。現行法令では、これまでの実務運用とは異なる点も多く見受けられるため、企業は関連法令を再度確認のうえ、労務上また税務上の対応を決定することが望ましい。


参考法令
・政令第219/2025/ND-CP号(202587日付)
・内務省公文書第10861/BNV-CVL号(20251119日付)
・政令第320/2025/ND-CP号(20251215日付)


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