Reportレポート

付加価値税(VAT)10%から8%となる際の企業向けの留意点

2023/09/23

1. VAT減税の対象
 VAT減税は、現在10%から8%に減税対象となっている商品・サービスに対して適用されるが、以下の3つのグループは対象外となる。

a)電気通信、金融活動、銀行、証券、保険、不動産事業、金属およびプレキャスト(製造済み)金属製品、鉱業製品(石炭鉱業を除く)、コークス鉱業、精製油、化学製品
b)特別消費税が課税される商品およびサービス
c)情報技術

 商品・サービスの種類別のVAT減税は、輸入・生産・加工・商業営業の各段階で一律に適用される。政令に添付された付録I・II・IIIに記載されている商品・サービスが、付加価値税法によるVAT課税対象外やVAT5%の対象である場合は、VAT減税は適用されず、付加価値税法の規定に準拠する。

2. VAT減税を適用する際の注意点
 VAT減税は、2022年2月1日から12月31日の期間にも実施されたが、実施過程でいくつかの問題が発生し、企業に多くの困難をもたらした。従って、VAT減税を適用する際には、以下の点に注意する必要がある。

2.1.VAT減税の対象となる購入または販売した商品・サービスの確定
 商品・サービスがVAT減税の対象となるか否かを確定するために、手順としては、以下の通りに実施することを推奨する。

ステップ①
 政令44/2023/ND-CP号第1条第1項と照合し、会社やサプライヤーの事業分野および商品・サービスのグループが、上記a)、b)、c)に記載のグループに該当するか否かを確定する。
・該当する場合、以下のステップ②を続けて行う。
・該当しない場合、当該商品・サービスはVAT減税の対象となる。

ステップ②
 以下の手順によって、政令44/2023/ND-CP号の付録I・II・III(VAT減税の対象外のリスト)と照合する。
・サービスに対して、(4)~(7)の欄の事業コードをチェックする。
・輸入、生産、加工、商業の活動に対しては、次の通りである。
+生産、加工、商業の活動に対して、(8)(9)の欄をチェックする。
+輸入の活動に対して、HSコードをチェックする(付録I・IIIの(10)の欄)。
企業は、ビジネスポータル(https://dangkykinhdoanh.gov.vn/vn/Pages/Trangchu.aspx)に会社名または税コードを入力し、事業コードと活動明細を検索できる。
※ビジネスポータル上の事業コードは4桁の事業コードであり、事業の詳細は決定書27/2018 /QD-TTg号で確認できる。

 実際の適用状況を見ると、自社の商品・サービスがVAT減税の対象外のリストに載っているか否かを判断することは、企業にとって難しいことがわかる。理由としては、企業の生産・事業活動は多様かつ複雑であり、法令では各企業の個別ケースについての詳細な案内がないためである。該当の可否が判断できない場合には、詳しい案内をもらうために、管轄税務当局へオフィシャルレターを提出することを推奨する。

2.2.VAT減税を適用する際の留意点
 VAT減税の適用期間は2023年7月1日から12月31日までとなる。政令44/2023/ND-CP号には、VAT減税を適用できるためのインボイスの発行時点について、詳細に規定されていない。当件に関して、2023年7月末時点では、財務省のオフィシャルレターによる新たな指示は出ていない状況である。そこで、2022年3月23日付のオフィシャルレター2688/BTC-TCT号に基づき、企業は以下の場合に留意する必要がある。

・事業所はサービス提供前または提供中に金額を徴収するサービス提供契約を締結し、2023年7月1日より前に徴収時点でVAT10%税率でのインボイスを作成したが、7月1日から12月31日までの間にサービスを完了する場合、7月1日より前に作成されたインボイスの金額はVAT減税を適用できない。規定に従って、2023年7月1日から12月31日までの間にインボイスが作成される残りの未払い額は、VAT減税を適用できる。

・事業所が2023年7月1日より前にVAT10%の対象となる商品・サービスを提供したが、7月1日より前に発生した商品・サービスの販売による収益に対するインボイスを7月に作成する場合、インボイス作成時期の誤りとみなされ、VAT減税を適用できない。

・2023年7月1日より前に作成されたVAT10%のインボイスに対しては、7月1日以降に金額、VAT税率、VAT額に関して調整や返品が発生する場合、調整インボイスや返品インボイスは、VAT10%で作成される。

・電力供給等の特定の商品・サービスを提供する活動に対しては、事業所は、2023年7月1日から12月31日までに作成されるインボイスに対してVAT減税を適用できる。

3. VAT計算に控除方式を適用している企業が、誤ったVAT税率を適用した場合の潜在的なリスク
 実務上、企業が商品やサービスのVAT税率を誤って確定した場合、売り手が誤ったVAT率でインボイスを発行し、売り手と買い手が共にVAT申告書やVAT還付書類(ある場合)に誤ったVAT申告をするというリスクがある。以下の2つの場合について確認してほしい。

3.1.商品・サービスはVAT8%の対象だが、売り手はVAT10%のインボイスを発行した場合
・売り手に対するリスク
 売り手は、インボイスに記載されている税率(規定より高い税率)でVAT申告納税するため追徴課税のリスクはないが、政令125/2020/ND-CP号第12条に規定されている行政罰金のリスクがある。政令125/2020/ND-CP号第12条によると、申告書や付録で申告を誤ったが、納税義務の確定に関係ない場合は、1,500,000ベトナムドン(VND)から2,500,000VNDの罰金が科せられる。

・買い手に対するリスク
 VATに関する通達219/2013/TT-BTC号第12条第5項に基づき、売り手がインボイス上の税率で税金を申告納税した場合、買い手はインボイスに記載されている税率で仕入VAT額(2%の差額)を控除できるが、売り手側の管轄税務当局の確認が必要となる。ただし、VATの還付可能な企業は、下記のリスクがある。
+誤ったVAT税率が適用された仕入インボイスについて、2%の差額に相当するVAT額が還付されない。
+誤った申告をしたが、VAT還付書類上の還付税額が増加しない場合、5,000,000VNDから8,000,000VNDの罰金、または、規定より多く受け取った還付額に対して20%の罰金が発生する。

3.2.商品・サービスはVAT10%の対象となったが、売り手はVAT8%のインボイスを発行した場合
・売り手に対するリスク
法令上、売り手は10%の税率でVAT申告納税する必要があるため、以下のリスクが発生する。
+VAT金額の不足分に対する課税徴収
+不足分の20%の罰金
+延滞利息(0.03%×滞納日数×不足分)

・買い手に対するリスク
+仕入VATの控除・申告について、買い手はインボイスに記載されている税率で仕入VAT額のみを控除できる。
+VATの還付可能な企業は、インボイスに記載されている税率でVAT額のみ還付される。また、誤った申告をしたが、VAT還付書類上の還付税額が増加しない場合、5,000,000VNDから8,000,000VNDの罰金が科せられる。

 上記の通り、企業は販売する商品・サービスに適用されるVAT税率を正確に確定する必要がある。なお、将来のリスクを最小限に抑えるため、サプライヤーのVATインボイスの仕入VAT税率を確認しておくことを推奨する。

結論
 VAT減税の適用は、新型コロナウイルス流行後の経済停滞から、企業が生産・事業活動を回復・発展させるための多大な経済的利益をもたらす効果がある。ただし、将来の税務調査・検査の際に、企業や取引先、サプライヤー等にリスクを生じさせないよう、適切な税率を適用するよう留意してほしい。

参考法令:
・政令44/2023/ND-CP号
・政令15/2022/ND-CP号
・政令123/2020/ND-CP号
・政令125/2020/ND-CP号
・通達219/2013/TT-BTC号
・2022年3月23日付のオフィシャルレター2688/BTC-TCT号
・2023年5月10日付のオフィシャルレター1647/TCT-CS号

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