Reportレポート

個人所得税の申告先の決定方法について

2023/04/27

  • Nguyen Thai Quoc Nam

はじめに
 個人所得税の月次(または四半期次)申告、及び年次確定申告については、多くのベトナム関係者が関心を持つ重要な論点の1 つである。特に、複数の収入源から所得を得ている場合、またはベトナム以外の海外の会社から収入を得ている場合には留意が必要である。
 この記事では、2020 年から有効となった税務管理法38/2019/QH14 号及び政令126/2020/ND-CP号に基づき、個人所得税の月次(または四半期次)申告、及び年次確定申告の際の、申告先となる税務当局について説明する。

1.月次(または四半期次)申告の際の申告先となる税務当局について
 月次(または四半期次)申告の際の、申告先となる税務当局は以下のとおりである。

・ベトナムの会社から給与や報酬等を受領している場合
 当該ベトナムの会社が、個人所得税を源泉徴収し、税務当局に納税する責任を有する。申告先は以下のとおり。
 -外資系企業、外資系企業の支店、外資系企業の駐在員事務所、プロジェクトオフィス、経営拠点などについては、中央管理局直轄の市税局及び省税局に対して申告する。
 -ベトナム資本の国内企業については、省管理局直轄の市税局及び地区税務署に対して申告する。

・海外の会社及び個人から支給される給与や報酬等を受け取っている場合
 職場がある地域の管轄税務署に納税申告書を提出する。まれなケースではあるが、ベトナムに居住しているものの、実際に仕事を行っている場所がベトナムではない場合は、居住地の管轄税務署に納税申告する。
 なお、親会社の指示により、ベトナムの駐在員事務所で勤務するように任命され、駐在員事務所から直接給与や報酬等を得ている場合、ホーチミン市税局に対し、駐在者本人が駐在員事務所の管轄税務当局に収入金額を申告する必要がある。

2.確定申告の際の申告先となる税務当局について
 給与や報酬等の支払い元である会社に申告を委任する場合、当該会社が自身の管轄税務署に確定申告書類を提出する。
 一方、委任しない場合、確定申告書類の提出先となる税務当局は、以下のケースに応じて決定されることになる。

【表:確定申告書類の提出先となる税務当局】

  • 一般的なケース
ケース 申告先
(1)個人が一か所のみから給与や報酬等の所得を受領している場合 給与や報酬等の支払元である会社(または個人)の感覚税務署
(2)個人が二か所以上から給与や報酬等の所得を受領している場合 年間で最も給与や報酬等の支払金額が多い拠点での管轄税務署
(3)上記(2)のうち、支払元ごとに給与や報酬等の金額を把握することができない場合 支払元のうち、いずれかの拠点(または個人)の管轄税務署
  • その他のケース
ケース 申告先
(1)支払元である会社(または個人)側で扶養控除が適用される場合 支払元である会社(または個人)の管轄税務当局
(2)年度中に転職をしたケースで、最後の転職先の会社(または個人)側で扶養控除がで起用される場合 最後の転職先の会社(または個人)の管轄税務当局
(3)年度中に転職をしたケースで、最後の転職先の会社(または個人)側で扶養控除が適用されない場合 対象者の居住地域の管轄税務署
(4)複数の会社で副業しているケースで、いずれの会社においても扶養控除を適用しない場合 対象者の居住地域の管轄税務署
(5)確定申告の対象年度内に1か所または2か所以上から収入を得たが、年度末時点でいずれの会社にも属していない場合 対象者の居住地域の管轄税務署
(6)確定申告の対象年度内に、変則的な所得を受領したことにより、10%を源泉徴収されたことがある場合

※労働契約を締結していない、または労働期間が3か月未満の労働契約を締結している従業員が、2,000,000VND以上の所得を得た場合は、当該所得の10%が源泉徴収される

対象者の居住地域の管轄税務署

おわりに
 以上、特定のケースに応じた月次(または四半期次)の納税申告や、年次確定申告する際の申告先となる税務当局について説明した。会社や個人は、上記の原則を的確に適用するよう留意が必要である。

参考文献
-2020年10月19日付政令126/2020/ND-CP号(2020年12月5日から有効):税務管理法の詳細規定
-2019年6月13日付税務管理法38/2019/QH14号(2020年7月1日から有効):各種税務及び国家予算その他の未収金の管理規定

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