Reportレポート

2021年労働法における男性労働者の産休制度の留意点について

2022/01/20

  • Tran Thi Thu Uyen

はじめに
 産前産後における休業制度は、労働者にとっても関心の高い制度の1つであるが、女性の産休制度に加え、企業は男性労働者の産休制度にも注意を払う必要がある。本稿では、企業が労働法を順守し、男性労働者の権利保護や規定の理解へと繋がるよう、男性労働者の産休制度の概要について説明する。

1.男性労働者の産休制度概要
 2014年社会保険法(以下、「社会保険法」)第31条第1項、Circular 06/2021/TT-BLDTBXHに基づき、次のいずれかの場合に、男性労働者は産休制度を利用することができる。

1.1 社会保険料を支払っている男性労働者の配偶者が出産する場合
▽制度を受けられる期間について:
社会保険法第34条第2項において、配偶者の出産時に取得できる休暇日数は、次の通り規定されている。

番号 対象 休暇日数
1

出産する子供が1人の場合(自然出産)

5営業日
2 出産時に手術が必要である、または32週未満の子供を出産する場合 7営業日
3 双子を出産する場合(三つ子以上の出産の場合は、3人目から1人あたり3営業日の追加休暇を取得することが可能である) 10営業日
4 双子以上の出産で、手術が必要である場合 14営業日

 休暇期間は出産日から計算され、休日、祝日および正月休みは含まれず、産後30日以内の期間において休暇を取得することが可能である。なお、産前に休暇を取る場合は無給休暇または有給休暇として扱われ、当期間において、会社は労働者に対して給与を支払う必要はない。
 従来は、配偶者の出産時に男性労働者が産休を取得できる回数を規定する法令がなかったが、Circular 06/2021/TT-BLDTBXHの規定により、2021年9月1日以降、複数回休暇を取得することが可能であり、上記の表に記載した休暇日数を確保する必要がある。

▽社会保険の給付について:
社会保険法第39条の規定によると、男性労働者は以下の通り、社会保険の給付を受けることができる。

配偶者の出産時の
社会保険給付額
= 社会保険料を納付した直近6カ月間
の基本給の平均額
÷ 24 × 休暇日数

仮に過去6ヶ月分の社会保険料の支払いをしていない場合は、社会保険料を支払った月のみを対象として、給与の平均額を算出する。

配偶者の出産時、上記の社会保険の給付に加え、男性労働者は、次の2つのケースのいずれかに該当する場合、子供1人当たりに対して基本給の2カ月分を一時手当として受け取ることができる。
– 男性労働者のみが社会保険に加入しており(配偶者は加入せず)、配偶者の出産前の12カ月間において、男性労働者が6カ月以上社会保険料を支払っている場合。
– 男性労働者とその配偶者の両方が社会保険に加入しており、配偶者は出産給付金の受給条件を満たしておらず、男性労働者は配偶者が出産する前の12カ月間において6カ月以上社会保険料を支払っている場合。

1.2 男性労働者が避妊手術を受ける場合
▽休暇期間について:
 社会保険法第37条に基づき、避妊手術を受ける男性労働者は、管轄の医療施設の指示に従って休暇を取得することができる。最大15日間であり、休日、祝日、正月の休暇が含まれる。

▽社会保険の給付について:
 社会保険法第39条の規定によると、給付金額は次の通り計算される。

避妊手術を受ける際
の社会保険給付額

=

社会保険料を納付した直近6カ月間
の基本給の平均額

÷ 30 × 休暇日数

 仮に過去6カ月間の社会保険料を支払っていない場合は、社会保険料を支払った月のみを対象として平均給与額を算出する。

2.男性の産休制度に関する申請書類
 社会保険法第101条、Decision 166/QD-BHXHに基づき、出産給付金の申請方法は申請内容によって異なる。具体的には、
・配偶者の出産時
 労働者が用意するもの:
  – 出生証明書のコピー
  – 妊娠32週未満で出産する場合、または手術が必要な出産の場合の医療機関が発行する証明書(ある場合)。
  – 出産直後に子供が死亡した場合、死亡証明書または母親の医療記録の要約/退院証明書(ある場合)。
 会社が準備する書類:
  – 産休を取得している労働者のリスト、フォーム01B-HSB。

・避妊手術を受ける場合
 労働者が用意する書類:
  – 入院治療が必要な場合:退院を証明できる書類のコピー。
  – 外来治療を受ける場合:社会保険を受ける休暇証明書。または、入院治療期間後の外来治療の担当医を任命した退院時の証明書のコピー。
 会社が用意する書類:
  – 産休を取得している労働者のリスト、フォーム01B-HSB。

3.社会保険給付手続きの期限
 社会保険法第102条において、男性労働者の出産給付金の手続きは次のように規定されている。

 男性労働者が職場に復帰した日から55日以内に、会社は社会保険機関に申請書を提出する必要があるが、申請期間を過ぎた場合、保険機関は申請を受け付けなくなるので注意が必要である。

4.男性労働者の産休取得の特別なケース
 Circular 59/2015/TT-BLDTBXHの第10条で規定されている一部の特別なケースでは、男性労働者は次のいずれかに該当すれば、更に長期間の休暇を取得可能である。

– 男性労働者と配偶者の両方が社会保険に加入しており、出産給付金の受給条件を満たしている配偶者が出産後に死亡した場合、男性労働者は配偶者の産休日数を男性労働者自身の産休として取得可能である(女性労働者の産休は6カ月である)。
– 男性労働者と配偶者の両方が社会保険に加入しており、出産給付金の受給条件を満たしていない配偶者が出産後に死亡した場合、男性労働者は子供が生後6カ月になるまで産休を取得可能である。
– 社会保険に加入しているが、出産後に配偶者が亡くなった場合において産休を取らない男性労働者は、給与に加え、配偶者に対して給付される予定であった給付金額を受け取ることができる。
– 男性労働者が社会保険に加入しているが、配偶者が出産後に死亡または重篤な状態にあり、育児をするのに十分な健康状態ではないことが治療施設により認定される場合、男性労働者は子供が6カ月になるまで産休を取得可能である。
上記の産休期間には休日、祝日、正月の休暇が含まれる。

おわりに
 本レポートでは、男性労働者の産休制度に関する概要を解説したが、社会保険手続きに関しては、管轄の保険機関によって対応が異なる場合があるため、企業の関連部署や担当者は、当該手続きや必要書類について、保険機関に事前確認することをお勧めする。

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