Reportレポート

会社の定期的な投資活動報告、労働報告の義務と留意点

2022/02/18

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 会社は、設立後、事業分野に応じ、管轄機関に対して各種の定期報告義務を負うこととなる。報告義務に違反した場合は行政処分を受けるだけではなく将来的にライセンスの修正手続きを行う際にも影響が出る可能性がある。本レポートでは、ベトナムで活動する外資系企業の投資・労働分野における主要な定期報告義務と報告時に留意すべき点について紹介する。

1.投資活動報告義務
 ベトナムで投資プロジェクトを実施し、投資登録証明書(IRC)を付与された経済組織(主に外資系企業を指す。以下「会社」という)は、所在する地域の投資登録機関および統計局に対し定期的に投資活動報告を行わなければならない。報告の種類と頻度は、「四半期報告」が年4回、「年次報告」が年1回で、合計5回とされている。

No. 報告の
種類

締切り

報告フォーマット・項目

報告方法

1 四半期
報告
報告対象となる四半期の翌四半期初月の10日
通達03/2021/TTBKHDT号のフォームA.III.1。報告するべき項目は以下のとおり。
(i)出資済み投資資本
(ii)売上、輸出、輸入
(iii)労働者数、給与
(iv)税金その他の国家に対する納付額
(v)土地と水の利用状況
会社は、付与された投資登録アカウントを使用し、国家投資情報システム(https://fdi.gov.vn/)において報告を行う。
*投資登録アカウントが付与されていない場合やアカウントのアクセス情報を紛失した場合、会社は投資登録機関に連絡し、再発行を依頼する必要がある。
2 年次
報告
報告年度の翌年3月31日
通達03/2021/TTBKHDT号のフォームA.III.2。四半期報告書と同じ項目に加え、以下の項目について報告する。
(i)利益
(ii)労働者の収入
(iii)科学的研究、技術開発、環境保護、使用している技術のために拠出した費用と投資及び利用技術の由来(もしあれば)

 会社が投資報告を実施しない場合、または不誠実な報告を実施したことが発覚した場合、VND5,000,000~VND10,000,000のペナルティを納付し、改めて報告または修正報告を実施しなければならない。近年、特にハノイとホーチミン市の投資登録機関では、会社の報告義務に対する検査を強化しているため、新設の会社に限らず、まだ定期報告書を作成・提出していない会社は、改めて報告義務について理解し、早めに実施することが求められる。

2.労働報告義務
 従業員の雇用状況など労務についても、会社は定期的に管轄の労働監督機関に対して報告を実施しな ければならない。会社に対して行政による労務関連調査が行われる場合、本社で作成された労務管理簿に 加えて、会社設立時から調査時点までに提出されたすべての定期報告の提出が求められる。労務関連調 査の際に提出状況がチェックされる主な報告書の種類と概要は、以下のとおりである。

No. 報告の種類 締切り 提出先 ペナルティ
1

労働雇用の状況報告

(i)6月5日以前
(ii)
12月5日以前
省/市の労働局

VND2,000,000 – 6,000,000

2

外国人労働者状況の定期報告

(i)1月5日以前
(ii)7
月5日以前

VND2,000,000 – 6,000,00

3

失業保険加入状況報告

1月15日以前 規定なし
4

労働安全衛生報告書

1月10日以前

VND2,000,000 – 6,000,000

5

労災状況報告書

(i)7月5日
(ii)1月10日

VND10,000,000 – 20,000,000

6

労働安全衛生トレーニングの結果報告書(会社が自社で労働安全衛生訓練を実施する場合)

12月15日以前 (i)労働省
及び
(ii)省/市の労働局

VND2,000,000 – 6,000,000

 現行規則では報告義務を有する組織の種類や業種が限定されていないため、すべての業種における、労働者を雇用しているすべての会社、協同組合、家庭、その他事業者において上記の報告を行わなければならない。特に表中の4、5、6番の報告書については、製造業以外の業種では見落とされがちであり、留意が必要である。
 提出先について、一部の管轄機関は報告書の受領権限を地区レベルの機関に委譲しているため、会社は報告書の様式や提出先について所轄機関に確認する必要がある。

おわりに
 本レポートでは、会社がベトナムに投資し事業を行う過程で実施しなければならない、投資と労働分野における重要な定期報告について説明した。法令上の規制にかかわらず、遅延や不正確な報告が多い投資報告や労働報告については、当局の調査や確認がこれまで以上に厳格に、また頻繁に行われるようになってきている。警告や制裁を受けてしまうリスクを回避するため、会社は、必要な報告を適時に正確に実施するべきである。

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