Reportレポート

付加価値税率の10%から8%への引き下げについて

2022/03/17

  • Ngo Hong Nhung

はじめに
 2022年1月11日、ベトナム政府は「社会経済復興開発プログラム」の追加経済支援策として、財政及び金融政策に関する決議Resolution 43/2022/QH15(以下「Resolution43」)を国会で採択した。具体的な免税及び減税政策として、付加価値税率(以下「VAT」)の10%から8%への引き下げが発表された。その後、2022年1月28日、Resolution43の詳細ガイダンスとDecree 15/2022/ND-CP(以下「 Decree 15」)が発行された。
 本稿では、Decree 15に案内されているVAT減税の適用開始時期や期間、軽減税率の適用範囲、軽減税率を適用した場合のインボイス発行や税務申告時の留意点について解説する。

1.VAT減税の適用開始時期や期間
 VATの税率引き下げは、2022年2月1日より適用開始し、2022年12月31日まで適用される。

2.軽減税率の適用範囲
 以下の商品及びサービスを除き、現在10%のVAT税率が適用されている商品及びサービスの税率が8%に引き下げられる。減税適用の対象外となる商品及びサービスは以下のとおりである。

a. 電気通信、金融、銀行、証券、保険、不動産事業、金属生産及びプレハブ金属製品の製造、鉱業(石炭鉱業を除く)、コークス生産、石油精製、化学物質や化学製品の生産(詳細はDecree 15の付録Iに記載)。
b. 特別消費税の対象となる商品およびサービス(詳細はDecree 15の付録 IIに記載)。
c. 情報通信法に準拠した情報通信業(詳細はDecree 15の付録IIIに記載)。

 VAT減税は、輸入・生産・加工・販売すべてにおいて統一して適用される。
 なお、Decree 15の付録 I、II、IIIに記載されている商品及びサービスが、付加価値税法に基づきVATの非課税、もしくはVAT5%の適用対象となっている場合、その税率は付加価値税法に従うこととされており、減税対象外となる。

3.軽減税率の適用範囲
 VATの申告方式には、控除方式1と直接方式2の2つがあり、申告方式によって軽減税率の適用方法が異なる。

<控除方式の場合>
 控除方式を適用している事業者の場合、VAT税率適用対象の商品・サービスに対して8%のVAT税率を適用することができる。

<直接方式の場合>
 直接方法を適用している事業者(自営業等)の場合は、VAT税率適用対象の商品・サービスに対して現行のみなし付加価値税率に対して 20%減税することができる。

4.軽減税率を適用した場合のインボイス発行
<控除方式の場合>
 控除方式を適用している事業者の場合、インボイス発行時にVAT税率の欄に8%と記載し、軽減税率適用後の税額および合計金額を記載し、インボイスを発行する。

<直接方式の場合>
 直接方法を適用している自営業等の場合は、インボイス発行時に小計の欄に減税前の金額を記載し、合計金額の欄に減額後の金額を記載すると共に「Resolution 43/2022/QH15 に基づき、みなし付加価値税率に対して 20%減税を適用し、〇〇〇VNDを減額した」旨も記載する。
 なお、事業者は、VAT減税対象の商品・サービスに対して別途インボイスを発行しなければならない。別途で発行しない場合、減税を受けることができないとされている。
 もし誤って減税前の税率でインボイスを発行し、VAT申告を行った場合、売手と買手の間で合意書(修正に関する議事録)を作成すると共に、売手は買手に対して修正インボイスを発行しなければならない。

5.軽減税率を適用した場合のVAT 申告時の留意点
 事業者は、VAT申告時に通常のVAT申告書と一緒にDecree 15の付録IVに添付されているフォーム01に記入し、減税対象の商品・サービスのVATを申告しなければならない。

おわりに
 以上、Decree15に案内されている付加価値税のVAT減税について解説した。本稿を今回の減税制度への理解を深めるために有効活用していただければ幸いである。

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