Reportレポート

会社を休眠する場合の留意点

2022/03/21

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 休眠とは、会社が一時的に営業活動を停止した状態である。具体的には、会社は休眠期間中に契約書の締結、請求書の発行及びその他の活動を行うことが許されていない。休眠期間が満了した後、会社は営業再開するか、もしくは本店所在地域の計画投資局に営業停止の継続の通知手続きをすることができる。
 会社が休眠する場合の留意点を以下の通りまとめる。

1.休眠する際の通知手続きについて
(1)従前の 2014年企業法では、休眠開始日の15日前までに、本店所在地域の計画投資局に通知手続きをしなければならないと規定されているが、現行の2020年企業法第206条第1項においては、休眠または再開日の3日前までに通知手続きを行う必要があると変更されている。

(2)従前の2014年企業法において、休眠は1年毎に申請が必要で、最大2年まで可能であることが規定されているが、現行法では1年毎に申請が必要な点は同じであるが、年数制限は撤廃されている。これまで、経済的理由やエピデミックの影響などにより営業活動の継続が困難な場合において、清算手続を実施するケース も多かったが、上記の法改正により長期的な休眠を選択することも可能になったといえる。

2.税務関連の申告手続きについて
(1)事業登録税
 政令22/2020/ND-CPに基づき、会社が暦年の1年を通して休眠する場合、事業登録税の支払い期限である1月30日までに計画投資局に休眠通知申請を行い手続きが完了すれば、事業登録税の申告・納付は不要である。なお、休眠する年の事業登録税を仮に納付した場合は、還付されないため留意いただきたい。

(2)税務申告・納税
 政令126/2020/ND-CP第4.2.a条より、休眠期間において税務申告・納税義務はない。ただし、各種税務申告・納税の対象期間中に会社が1日でも活動している場合、対象の申告・納税を行う必要がある。
例:2021年1月3日から2022年1月2日まで休眠し、2021年1月1日、2日だけ営業を行った場合、2021年1月及び2021年の第1四半期の税務申告・納税をする必要がある。

3.違反に関する罰則について
 政令No.122/2021/NĐ-CP第63.1.c条、第63.2条より、計画投資局へ通知手続きを実施せず休眠及び通知した休眠期間終了前に事業再開を行う場合、会社は5,000,000VNDから10,000,000VNDの罰金を課されると規定されている。さらに、2020年企業法第212.1.c条に基づき、違反の重大性に応じてライセンスが取り消される場合がある。または、是正措置の適用により、会社は本店所在地域の計画投資局に休眠手続きを行うことを強制される場合がある 。

4.その他の留意点
(1)関連当事者の義務
 2020年企業法第 206.3条に基づき、 休眠期間 においても、企業は未払いの税金、社会保険、健康保険、失業保険がある場合、その全額を支払う必要がある。企業、債権者、顧客および従業員による別段の合意がない限り、債務の支払いも継続する。

(2)従業員に対する義務
 休眠する場合、従業員と締結した労働契約の処理については以下2つのオプションがある。
 ・労働契約終了の合意
 ・労働契約の一時停止の合意
 2019年労働法第30.2条に基づき、労働契約が一時的に停止されている期間において、従業員は労働契約書上で合意した給与、手当、その他の権利などを受け 取ることはできない。労働契約の一時停止期間が満了した場合、会社は締結された労働契約に基づいて従業員が仕事に復帰することを受け入れる必要がある。なお、上記2つのオプションを実施するにあたり、休眠前に、社会保険の減額通知手続きを別途行う必要がある。

(3)支店または駐在員事務所の場合
 会社が休眠手続きを実施した場合、その支店や駐在員事務所は、会社の休眠状況に応じて、計画投資局より活動停止の措置がとられる。上記の通り、休眠および休眠中の手続きに関する留意点をまとめたが、申請を行う際には事前に管轄当局や専門家に確認することをお勧めする。

本レポートに関する
お問い合わせはこちら