Reportレポート

2019年労働法に基づく未消化の有給休暇の買い取りについて

2022/04/29

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 未消化の有給休暇の買い取りに関して、2012年労働法(旧労働法)114条1項において、「労働者が、退職、失職またはその他の理由により、年次有給休暇を取得していない、または年次休暇日数を全て消化していない場合、使用者は未消化の年次有給休暇を賃金として清算することができる。」と規定されていた。
 一方、 2019年労働法(新労働法)113条3項では、以下のように規定されている。「労働者が、退職、失職により、年次有給休暇を取得していない、または年次有給休暇日数を全て消化していない場合、使用者は未取得の有給休暇につき賃金で清算することができる。」現状、新労働法により、「またはその他の理由」の部分が削除されており、退職、失職以外の理由による未消化の有給休暇日数の買い取りが認められるか、また、認められる場合の買い取り額をどのように計算すべきか理解していない企業も多い。
 そこで、新労働法に基づき、未消化の年次有給休暇の買い取りについて、実務上の留意点を共有する。

1.有給休暇の買い取りが認められるケース
 上記の通り、旧労働法においては、退職や失職を含む全ての理由により未消化となった年次有給休暇の買い取りができた。一方、新労働法では、「またはその他の理由」の部分が削除されており、退職や失職以外の理由による、未消化の有給休暇の買い取りができるか否かについては明記されていないため、買い取りが認められるかどうかは不明確である。

 未消化の有給休暇の買い取りについては、管轄の労働局により見解が異なる。そのため、退職、失職以外の、その他の理由により未消化となった有給休暇の買い取りを行う場合は、まず就業規則に買い取りについて規定した上で、労働局の承認を得ることをお勧めする。但し、実際には、就業規則に退職、失職以 外、その他の理由による未消化の有給休暇の買い取りについて明記し、労働局から承認された事例もあるが、一方で、否認された事例もあるため、手続きを実施する際には予め管轄の労働局に確認いただきたい。

 買い取りが認められる場合の金額について、現状は以下2つの見解がある。

①平日の勤務を想定し、労働契約の給与の 100%で買い取る。
②有給休暇日に勤務し、時間外勤務をしたと想定し、労働契約の給与の 300%で買い取る。

 また、承認されなかった場合、企業は有給休暇のスケジュールを設定し、労働者が全ての有給休暇を消化できるよう管理する必要がある。仮に、労働局の承認を得られず有給休暇の買い取りを行う場合、買い取り時の費用負担が法人税上損金不算入になるといった、税務上のリスクが生じる可能性がある。また、 労務上のリスクとして、VND10,000,000~VND20,000,000の罰金が課される場合もある。

おわりに
 退職、失職以外のその他の理由による未消化の有給休暇の買い取りについては、法律上不明確な点が多く、将来的な税務または労務リスクに繋がる可能性もある為、買い取りを行う場合、企業は管轄の労働局や専門家に確認をした上で、必要な手続きを講じていただきたい。

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