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労働法における職場でのセクシャルセクシュアルハラスメント防止規定の留意点

2022/05/27

  • Dang Le Minh

はじめに
 職場におけるセクシュアルハラスメントの防止は、2019年労働法(以下、「労働法」)の新規定の一つである。この規定は、健康的で安全な労働環境の確保を目的として策定された。特に、この規定の実施においては、雇用者が重要な役割を果たすことになる。そこで、本稿では、雇用者に対する本規定の留意点について説明する。

1.職場におけるセクシュアルハラスメントについて
1.1. 概念
 「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは職場で他人に対する性的行為をしたが、その人が期待しておらず、または受け入れられていない行為である。加害者および被害者は、労使関係を問わず、管理職、顧客、雇用者のパートナー等も対象となる。
 「職場」とは、従業員の事務所、雇用者が決定した懇親会、セミナー、研修会、訓練の場等の勤務場所を指す。

1.2. 形態
 職場におけるセクシュアルハラスメントは、職務上の利益を目的とした、何らかの便宜を与えることを交換条件とした申し出、要求、提案、脅迫、強制的な性交渉に限らず、職場環境を不快にさせたり、肉体的・精神的に不安にさせたり、被害者の仕事や生活に支障を来すような言動により発生する。職場におけるセクシュアルハラスメントの形態は以下のとおりである。
(1)行動的セクシュアルハラスメント: 性的な行為または性的な暗示、ジェスチャー、身体への接触などが含まれる。
(2)言語的セクシュアルハラスメント:性的な内容を含む対面、電話または電子的手段の会話が含まれる。
(3)非言語的行為によるセクシュアルハラスメント:ボディランゲージ、性的または性行為に直接または電子的に関連する視覚的な資料の表示、描写が含まれる。

2.対処責任
 職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するための解決策の実施は、労働法第6条に規定される雇用者の義務である。具体的には、雇用者は、職場でのセクシュアルハラスメント防止に関する実行と監視、法令の普及を実施する。また、セクシュアルハラスメントに関する苦情の受け付け・解決、セクシュアルハラスメント事件の関係者の秘密、名誉、信用、尊厳、安全を守るための迅速な予防、処理、措置を取る必要がある。
 具体的には、雇用者はセクシュアルハラスメント防止に関する規定を、(i)就業規則もしくは(ii)就業規則の付録で作成しなければならない。規定は以下の基本的な内容を確保する必要がある。

i. 職場におけるセクシュアルハラスメントを禁止すること
ii. 職場におけるセクシュアルハラスメント行為について、職務の内容や特性に応じ、詳細かつ具体的に規定すること
iii. 職場におけるセクシュアルハラスメント行為の社内処理に関する責任、期限、命令、手続き(苦情、糾弾、解決、関連規定など)
iv. セクシュアルハラスメント行為を行った者、または虚偽の告発を行った者に対する、違反行為の性質と重大性に応じた懲戒処分
v. 被害者への損害賠償および救済措置を設定すること
 雇用者は、上記に対応するために就業規則および関連規定を整備・改正すべきである。

3.懲戒処分等
 労働法第125条によれば、雇用者は就業規則の規定により、職場においてセクシュアルハラスメントを行った労働者に対し、解雇の懲戒処分を行うことができる。しかし、一律に解雇のみを適用するのではなく、違反行為の性質や程度に応じた懲戒処分を定めることを検討すべきである。
 また、セクシュアルハラスメント事件等の関係者の秘密、名誉、信用、尊厳、安全等を守るための迅速な予防、処理、措置を取る必要がある。そのため、虚偽の告発(言いがかり)などを行った労働者に対する懲戒処分も定めるべきである。
 職場におけるセクシュアルハラスメントに関連する懲戒処分を行う場合、雇用者は、違法な懲戒処分を避けるために、処分理由、処分の実施手続、時効に関する規定等を厳格かつ完全に順守しなければならない。

おわりに
 職場におけるセクシュアルハラスメントを防止する上で重要な役割を果たすために、雇用者は、この行為の本質、また雇用者・労働者の権利および義務を理解する必要がある。関連規制を制定し、実施し、普及させるとともに、適切な措置を講じていただきたい。

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