Reportレポート

政令第20-2026-ND-CPに基づく中小企業向け税制優遇の外国投資企業への適用可能性

2026/08/06

  • I-GLOCAL.CO.,LTD ホーチミン事務所
  • Nguyen Duc Son

エグゼクティブサマリー

① 政策の概要 — 決議第198/2025/QH15号と政令第20/2026/NĐ-CP号は、新設の中小企業(SME)に初回企業登録証明書の交付日から3年間の法人税免除を付与するが、FDI企業が対象となるかは明確に規定されていない。
② 法的根拠と除外 — 免税は初回登録年度から3年間連続で適用される(決議第10条4項・政令第7条3項a)。ただし組織再編(合併・分割等)で新設された企業や、法定代表者・無限責任社員・最大出資者が既存企業/解散後12か月未満の企業に関与していた場合は対象外(同b)。
③ 適用範囲の2解釈 — ①決議は国内民間経済の育成が目的でありFDIは対象外とみる解釈と、②明文の除外規定がないため要件を満たすFDIも適用可能とみる解釈がある。
④ リスクと対応 — 税務当局が国内企業限定と判断した場合、追徴・延滞利息・行政罰のリスクがある。設立初期は免税メリットが小さく申告義務も残るため、適用するか、公式ガイダンスを待って追加申告で相殺するかを慎重に判断すべき。

はじめに
2025年5月17日、民間経済の発展促進を目的とする決議第198/2025/QH15号が国会により公布された。本決議は、ベトナム企業、とりわけ中小企業(SME)の競争力向上を目的とする重要な政策であり、その具体的な適用方法を示すものとして、2026年1月15日付の政令第20/2026/ND-CP号が公布された。しかし、特に外国投資企業(FDI企業)への適用可否については依然として不明確な点が残る。本稿では、関連法令を整理するとともに、FDI企業が当該税制優遇措置を適用する際の潜在的リスクについて解説する。

1. 3年間免税に関する法的根拠

1-1 2025年5月17日付決議第198/2025/QH15号の規定

2025年5月17日付の国会決議第198/2025/QH15号において、以下のとおり規定されている。

 第10条 税金、手数料および各種料金に関する支援
 4.中小企業については、初回の企業登録証明書の発行日から起算して3年間、法人税を免除する。

1-2 2026年1月15日付政令第20/2026/ND-CP号の規定

2026年1月15日付政令第20/2026/ND-CP号は、上記の決議第198/2025/QH15号の詳細な施行指針を定めたものであり、以下のとおり規定されている。

 第7条 法人税の免税・減税
 3. 初めて事業登録を行う中小企業

 a) 初めて企業登録証明書の交付を受けた日から3年間、法人税が免除される。免税期間は、初めて企業登録証明書が交付された最初の年度から連続して計算される。なお、決議第198/2025/QH15号の施行日前に企業登録証明書の交付を受けており、かつ優遇措置の適用期間が残っている場合には、当該残存期間について、本項の規定に基づく優遇措置を適用することができる。

 b) 本項に定める優遇措置は、以下の場合には適用されない
 b1) 合併、統合、分割、分社化、所有者変更、または企業形態の変更により新設された企業
 b2) 新設企業の法定代表者(出資者ではない法定代表者の場合を除く)、無限責任社員、または出資比率が最も高い者が、現に活動している企業、または旧企業の解散時点から新設企業の設立時点まで12か月を経過していない企業において、上記いずれかの立場として事業活動に関与していた場合

※SMEの詳細な定義については、政令第80/2021/ND-CP号を参照のこと。

2.適用範囲について

上記の規定を踏まえると、当該政策の適用対象にFDI企業が含まれるか否かについて、明確な規定が示されていない。決議第198/2025/QH15号は、主として国内の民間経済の発展を目的として制定されたものであり、同決議において使用されている文言も、主に民間経済に関するものである。政令第20/2026/ND-CP号においても、現時点では、FDI企業に適用されるかどうかについて、明確な規定が示されていない。

当該規定の適用範囲については、主に以下の2つの解釈が考えられる。

解釈決議第198/2025/QH15号は、国内の民間経済の発展を促進するという政策的背景のもとで制定されたものである。また、政策説明する公衆コミュニケーションにおいても、主な目的は国内企業の支援に置かれている。
一方で、FDI企業は一般的に外国投資資本を有する企業として分類され、「民間経済」という概念と完全には一致しないと解釈される可能性がある。このような解釈に基づく場合、FDI企業は3年間の法人税免税措置の対象外と判断される可能性がある。

解釈現行法令上、FDI企業を明確に適用対象から除外する規定は存在しない。新設FDI企業は、ベトナム法に基づき設立された法人であり、中小企業の基準を満たす場合、優遇措置の対象に該当する可能性があると解釈することもできる。
この解釈に基づく場合、条件を満たすFDI企業についても、3年間の法人税免税措置を適用できる可能性がある。

3.リスクおよび対応方針について

FDI企業が決議第198/2025/QH15号に基づき、法人税の3年間の免税措置を適用する場合、政策解釈の相違に起因する一定のリスクが存在すると考えられる。税務当局が、当該政策はベトナム国内企業のみに適用されるとの見解を示した場合、企業は法人税の追加納付、延滞利息の支払い、その他の税務関連規定に基づく行政罰を科される可能性がある。

新設FDI企業に対しては、以下の2つの対応方針が考えられる。

  • 将来、税務当局が異なる解釈を示す可能性があるというリスクを踏まえつつ、企業が新設中小企業の要件を満たしている場合には、当該優遇措置を適用する。
  • 現時点では3年間の免税措置を適用せず、FDI企業が当該優遇措置の適用対象となるかについて、政府または税務当局の正式なガイダンスを待つ。その後、適用対象である旨の公式見解が示された場合には、追加申告を行うことで、既納税額を将来の税額と相殺することが可能となる。

おわりに
中小企業に該当するFDI企業の観点から見ると、本優遇措置は、そのメリットよりもリスクが大きい可能性がある。特に、設立初期は法人税額自体がそれほど多くない場合が多く、免税措置による実質的な税負担の軽減効果は限定的となり得る。また、免税措置を適用する場合でも、税務申告や報告義務は免除されない。
そのため、FDI企業は本政策の適用可否を慎重に検討するとともに、今後の追加ガイダンスや解釈通知を継続的に確認することが重要である。

参考文献
・2025年5月17日付決議第198/2025/QH15号

・2026年1月15日付政令第20/2026/ND-CP号
・2021年8月26日付政令第80/2021/ND-CP号


関連レポート
ベトナム法人税の概要と法改正の主要ポイント

本レポートに関する
お問い合わせはこちら