法人税における建設投資段階の為替差損益の税務整理
2026/04/09
- I-GLOCAL.CO.,LTD ホーチミン事務所
- Assistant Manager
- Nguyen Thai Quoc Nam
エグゼクティブサマリー
① 建設投資段階の為替差損益は、旧来の最大5年繰延処理が廃止され、発生課税期間に即時計上へ移行する。
② 建設投資段階でも課税所得が発生するとみなされ、法人税優遇措置の適用開始時期が前倒しになるリスクがあるため、税務当局への書面確認を推奨する。
③ 2025年1月1日前の繰延残高は、一括計上または継続配分のいずれかを選択し、必要に応じて税務当局へ確認する。
はじめに
建設投資段階において、企業は借入金、請負業者への支払い、機械・設備の購入など、多くの外貨建て取引を行う。また、期末の財務諸表作成時には、外貨建貨幣性項目の再評価を実施する。これらの取引により為替差損益が発生し、費用・収益の認識および法人税の確定に直接的な影響を与える。このような状況を踏まえ、建設投資段階において発生する為替差損益に関する法人税の取扱いを明確化するため、政令第320/2025/NĐ-CP号(以下「本政令」)が公布された。本稿では、本政令を元に為替差損益の取扱いと留意点を整理する。
1. 通達第78/2014/TT-BTC号に基づく建設投資段階における為替差損益の取扱い
2014年6月18日付財務省通達第78/2014/TT-BTC号 第6条第2.22項では、法人税の課税所得の確定時における損金算入・不算入項目について、以下のとおり規定されている。
「新設企業の固定資産を建設するため、事業開始前の建設投資期間中に、外貨建貨幣性項目の決済時に発生する為替差損益、および会計年度末における外貨建貨幣性負債の再評価により発生する為替差損益は、貸借対照表上に累積的に個別表示する。建設が完成し、固定資産の状態に変更して使用開始された時点から、建設投資段階に発生した為替差損益(差額の増減を相殺した後)を財務収益あるいは財務費用として、最大 5 年以内の期間で段階的に配分する。」
上記の規定に基づき、新設企業が固定資産を建設するための建設投資期間中において、外貨建貨幣性項目の決済時に発生する為替差損益、および会計年度末における外貨建貨幣性負債の再評価による為替差損益は、一括して損益計上せず、工事完了・事業開始の時点から、当該為替差損益を財務収益または財務費用として、最大5年以内で段階的に配分する。
2.本政令に基づく建設投資段階における為替差損益の取扱い
2025年12月15日付で政府より発行された本政令第10条 第16項a点では、課税所得の確定時における損金不算入費用について、以下のとおり定められている。
「a)生産・事業活動段階において、企業が固定資産を建設するための建設投資段階を含め、外貨建貨幣性項目に係る外貨建取引から発生する為替差損益は、当該課税期間において財務収益または財務費用として計上される。」
本政令によれば、通達第78/2014/TT-BTC号において規定されていた「新設企業の建設投資段階に発生する為替差損益を一括して損益計上せず、事業開始時点から最大5年以内の期間で段階的に配分する」という仕組みは廃止される。これに代わり、建設投資期間中に発生する為替差損益は、発生した課税期間において財務収益または財務費用として直接計上されることとなる。その結果、本件に関しては、会計上と法人税上の取扱いの差異は生じなくなる。
3. 本政令への移行に伴う留意点
建設投資段階において課税所得が発生した場合の税率優遇税制および免税・減税期間の適用、ならびに過年度に一時的に繰延処理されていた財務収益および財務費用の取扱方法に関する留意点は、以下のとおりである。
3.1 本政令 第19条および第20条に基づく法人税優遇措置の適用
優遇税率:本条に規定される企業の新規投資プロジェクトから生じる所得(本政令第18条第2項g号に定めるプロジェクトを含む)に対する優遇税率の適用期間は、当該新規投資プロジェクトが初めて売上を計上した年度から起算する。
免税・減税:免税・減税期間は、投資プロジェクトから初めて課税所得が発生した年度から起算する。ただし、プロジェクトから初めて売上が発生した年度から3年間課税所得が発生しない場合、免税・減税期間は第4年度から起算する。
一方で、本政令の適用により、建設投資段階において為替差損益が発生する課税期間に財務収益または財務費用として計上される場合、企業の主たる生産・事業活動による売上が発生していない段階であっても、建設投資段階における為替差損益の計上により、売上および課税所得が発生したとみなされる可能性がある。
他方、本政令では、当該売上および課税所得が、新規投資プロジェクトに対する法人税優遇措置の適用開始時期の判断根拠となるか否かについて明確にされていない。
当社としては、建設投資段階において発生する為替差損益にかかる売上および課税所得は、新規投資プロジェクトが実際に生産・事業活動を開始したことを正しく反映するものではなく、法人税優遇措置の適用開始時期を決定する根拠とはならないと考える。
ただし、現時点では本政令において本件に関する具体的な取扱いが明記されていないため、規定遵守を確保し税務リスクを抑制する観点から、企業は所轄税務当局に文書を提出し、自社プロジェクトの実態に即した法人税優遇措置の適用開始時期について、書面による指導を得ることが望ましい。
3.2 2025年1月1日前に発生した建設投資段階の為替差損益の経過措置
従来の規定に基づき一時的に繰延処理され、2025年1月1日前に残高が残っている建設投資段階の為替差損益については、企業が新規定を適用するにあたり、経過的な取扱いが問題となる。
しかし、本政令では、当該経過措置に関する具体的な取扱いが明確に規定されていない。当社の見解としては、企業は以下の二つの処理方法を検討し得る。
方法①:本政令の趣旨に従い、新規定の適用開始年度(すなわち2025年度)において、過年度からの繰延残高を財務収益または財務費用として一括して損益計上する。
方法②:旧規定に基づき、企業が事業を開始した年度から最大5年以内の期間にわたり、当該繰延残高を財務収益または財務費用として段階的に配分する。
なお、企業が統一的かつ適正な適用のために明確な法的根拠を必要とする場合には、所轄税務当局に文書を提出し、書面での指導意見を得ることが望ましい。
おわりに
以上、建設投資段階における為替差損益の取扱いに関する新規定の留意点を整理するとともに、新規定適用時に検討すべき処理方法を示した。企業は、自社の実情に応じて適切な対応を検討し、適用する必要がある。
参考文献
・通達第78/2014/TT-BTC号
・政令第320/2025/NĐ-CP号
関連レポート
・2025年10月1日施行の改正法人税法の主な変更点
・ベトナム法人税の概要

