Reportレポート

ベトナム政府の保証がない外国借入に関する主な変更点

2024/11/28

  • Le Thi Hoang Dung

はじめに
ベトナム政府の保証がない外国借入(以下「外国借入」)の管理に関して、通達12/2022/TT-NHNN(以下「OL.No 12/2022」)が2022年11月15日に、また通達8/2023/TT-NHNN(以下「OL. No 8/2023」)が2023年8月15日より施行された。これらにより、外国借入の規定の明確化および企業が迅速に資金を増やす条件の整備を含め、多くの変更がなされた。本レポートでは、昨今の外国借入に関する規定の主な変更点を解説する。

1. 外国借入の借入可能な使用目的が明確化され、一時的な預金も可能に

通達12/2014/TT-NHNN(以下「OL. No 12/2014」。2023年8月15日に失効)において、短期借入の使用目的について説明しておらず、中長期的での使用を目的とした短期借入を組むことは禁止されていた。しかし中長期的な使用に関する定義が明確ではなかったため、実際には多くの企業が短期借入で生産設備投資を行っていた。その後、短期借入を中長期借入に変更し、中央銀行に登録する際に、短期借入を誤った目的で使用していると指摘されているケースが見られた。
OL. No 8/2023は、外国借入の借入可能な使用目的についてより明確に規定し、企業は使用目的に応じた適切な借入期間を選択することが可能となった。なお、債務者は借入時の使用目的に従って外国借入を使用する義務がある。具体的には以下の通りである。

短期借入の借入目的
・既存外国借入の借換
・短期債務の支払い(国内借入を除く)

長期借入の借入目的
・投資プロジェクトの実施
・事業やその他のプロジェクトの実施
・既存外国借入の借換

特に短期借入においては使用目的が以前よりも厳格化されることになったと言えるため、実行する際には注意が必要である。同時に、短期借入の使用可能な範囲が明確になったことで、中央銀行に規定違反と指摘されるリスクの回避に役立つことが期待される。また、OL. No 8/2023では新たに借入金の預金について定められ、最大1カ月を上限にベトナムの金融機関または外国銀行の支店に預金することが可能となった。

 2. 短期および中長期借入関する手続きの変更

企業は短期借入の未返済残高、返済期日更新により借入期間が1年間以上となった短期借入および新規中長期借入を中央銀行へ登録する必要がある。OL.No 12/2022により、借入登録期限が借入契約書締結日から30日以内から30営業日内に変更され、中長期借入に関する登録書類の準備に時間的猶予が生まれた。

また、企業は短期借入および中長期借入に関する状況報告をすることが求められている。2022年11月15日以前は四半期ごとの実施をすれば問題なかったが、OL.No 12/2022施行後は中央銀行のウェブサイト(https://qlnh-sbv.cic.org.vn/qlnh/)を通じて毎月5日までに報告する必要がある。

3. 既存外国借入の借換を目的とした新規借入の借入に関する注意点

OL. No 12/2014では、新規外国借入を用いた既存外国借入の借換は認められていたが、支払利息やそのほか手数料等の追加の借入費用が発生しないことが条件とされていた。しかし2023年8月15日にこの条件が廃止され、新たな条件として、借入可能な金額は既存外国借入の元本残高、未払利息および手数料並びに新規借入の手数料の合計額以下であることが定められた。
なお、既存外国借入の借換を目的に新規中長期借入を借入れる場合、新規借入を組んだ日から5営業日以内に既存外国借入を返済する必要があることに留意すべきである。

 終わりに
ベトナムでの事業拡大に伴い資金調達を検討する際に、外国借入はもっとも多くの企業に採用されている手段であるため、今回の法改正の影響を受ける企業は多くあると想定される。企業は今回の法令変更の内容を十分に理解し、適切な外国借入を組むことで新たに享受可能となったメリットを最大限活用できる。本レポートがその一助になれば幸いである。

参考資料
・通達通達12/2014/TT-NHNN
・通達8/2023/TT-NHNN
・通達通達12/2014/TT-NHNN
・I-GLOCALのレポート ベトナムで親子ローン借入を行う際の留意点 – I-GLOCAL CO., LTD.

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