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EPE 企業(輸出加工企業)と Non-EPE 企業(一般企業)間の業態転換を行う際の注意点と手続きについて

2022/09/30

  • Trinh Thi Phuong

はじめに
 一部のFDI(外国直接投資)企業は、ベトナムで一定期間営業活動した後、経営環境の変化などにより、事業継続や需要喚起をめざす上で、業態転換を検討する企業も存在する。その選択肢の一つとして、EPE企業からNon-EPE企業、またはその逆への変更が挙げられる。
 本稿では、EPE企業とNon-EPE企業の比較や、業態転換の手続きの過程における留意点を解説する。

1.EPEとNon-EPEの比較

項目 EPE企業 Non-EPE企業
1.定義

 

EPE企業は「輸出加工企業」と呼ばれ、輸出製品の生産を専門とする企業であり、製品を輸出することを前提に、税務上のメリットを享受できる。輸出加工企業に関する政府の規定に従い、設立・運営されている。 Non-EPE企業は、ベトナムの法令に基づき、EOE企業の形態をとらずに設立した企業である。
2.輸出入税 非課税 外国及び非関税区域との間で商品を売買する場合、輸出入税の対象となる(免税とされる場合を除く)
3.付加価値税 不要 ・VATの対象となる

・月次/四半期ごとに控除方式または直接方式でVATを申告・納税する。

・申告方法を税務局に通知する必要がある

・輸出・投資プロジェクト・閉鎖の場合、該当する商品・サービスの仕入VATが還付される可能性がある。

4.通関手続き 海外企業との商品売買 必要 必要
Non-EPE企業との売買 必要 不要
EPE企業との売買 不要 必要
5.電子インボイス 非関税区域の組織・個人向けの売上インボイスのテンプレートを使用する Non-EPE企業向けの売上インボイス、VATインボイスを使用する。
6.税関監督検査制度 ・税関当局への厳格な監視・報告制度の対象

・税関当局への定期報告が必要

・税関当局への厳格な監視・報告制度の対象外。

・税関当局への定期報告が不要(輸入段階で免税が適用される一部の企業を除く。該当企業は税関当局への厳格な監視・報告制度の対象であり、税関当局への定期報告が必要となる)。

出所:各種資料を基に筆者作成

 なお、業態転換前の税務義務は、転換後の企業に継承される。

2.変更前の留意点
2.1. Non-EPE企業へ変更するEPE企業の場合
a. 税関当局に対して
 EPE企業は、未納税となっている原材料や商品などの輸入資産の在庫を特定し、ベトナムにおける販売・贈与・破棄または輸出目的など変更について報告する。税関当局によって変更が許可される前に、EPE企業は、これらの資産・商品の税関手続きを実施する責任がある(通達39/2018/TT-BTC 第1条第54項に基づく)。詳細は次の通りとなる。
・棚卸資産:仕入VATと輸入税の追加納付が必要。
・固定資産は、次の2つに分類される。
1)使用可能な状態ではない固定資産:棚卸資産と同様に仕入VATと輸入税を追加納付する必要がある。
2)減価償却されている固定資産:現在の規定では明確にされていない。企業は、仕入VATと輸入税を追加で納付する必要があるか否か、税関当局に確認することをお勧めする。固定資産や棚卸資産の数量が多い場合、処理が煩雑になり、また手続きにも時間がかかる。

 なお、税関当局は変更許可を出すにあたり、過去の未検査の期間に対して、申告・納税・企業の税関監督制度に基づき検査を実施する可能性がある。
 税関当局における変更手続きは一般的に煩雑になり時間がかかることが多いので、変更予定がある場合は、当検査への備えも含めて、事前準備をした上で申請手続きを実施いただくことをお勧めする。

b. 税務局に対して
 以下の作業が必要となる。
・非関税区域内の組織・個人の未使用の売上インボイスをすべて破棄する。
・インボイスの破棄について税務局に通知する。

2.2. EPE企業へ変更するNon-EPE企業の場合
a. 税関当局に対して
・まず、非関税区域におけるEPE企業の税関検査・監督条件を満たしていること。政令18/2021/ND-CPにおいて、EPE企業は以下3つの要件を満たす必要がある旨が規定されている。
1)外側の領域との間に分離できるフェンスがあり、ゲートや出入口のみから商品の出し入れを行う。
2)商品の出し入れを行うゲートや出入口では、夜間や休日を含め常時監視カメラを作動させている。また、監視カメラの映像データは、管轄の税関がオンラインでアクセス可能であり、EPE企業は最低直近12カ月分保管する。
3)税関法に従い、免税対象となる輸入品を管理可能なソフトウェアを導入し、輸入品の出し入れや在庫の情報を管理している。

・次に、変更前に、企業はすべての税務・関税義務を履行する必要がある(通達38/2015/TT-BTC 第78条第2項、通達39/2018/TT-BTC 第1条第54項により修正)。
具体的には以下の義務が該当する。
1)企業は、在庫のある原材料と資材の数量を報告する。税関当局は、在庫のある原材料と資材を確認し、規定に基づいて税務上の処理を行う。
2)企業は、税関当局に未払いの税金及び延滞税金・罰金(あれば)を納税する責任がある。

b. 税務局に対して
・規定に基づき、インボイスに関して以下の作業を実行する。
1)VATインボイスまたはNon-EPE企業向けの未使用の販売インボイスをすべて破棄する。
2)インボイスの破棄について税務局に通知する。
・VATの申告・納税
1)最終期間に対してVAT申告を行う。
2)VATが発生する場合:不足しているVATを全額納税する。
3)未控除仕入VATがある場合:この点は、現在の規定では明確に規定されていない*。
(*)2009年、2010年に、税務総局及び一部の地方税務局からのオフィシャルレターにおいて、未控除仕入VATは、解散・合併・所有権移転等の期間中の税金として還付できる旨が記載されている。ただし、直近で、一部の地方税務局(Vinh Phuc税務局など)のオフィシャルレターにおいて、未控除仕入VATはその期間の費用として計上する必要がある旨が記載されている。そのため、変更手続き前に、地方税務局から回答を受けるためにオフィシャルレターを提出することを勧めたい。

3.変更手続き及び必要書類
 EPE企業として投資登録証明書(IRC)を取得した場合、EPE企業からNon-EPE企業への変更、またはその逆の変更にあたっては、IRCの変更手続きを実施することになる。
 具体的に、プロジェクトの実施場所(企業の所在地)及びEPE企業に関連する情報の変更手続きである。

a. 手順について
 投資法61/2020/QH14 第41条、政令31/2021/ND-CP 第35条に基づき、
・ステップ1:企業は、下記の申請書類一式を工業団地の管理委員会に提出する。
・ステップ2:工業団地管理委員会は申請書類を確認し、企業の本社の管轄税関当局に回答要求書を送信する。
・ステップ3:税関当局からの回答を参考した後、工業団地管理委員会は、承認するか否か決定する。承認する場合、新しいIRCを発行する。否認された場合、書面でその旨を回答する。
※留意点:IRCの修正により事業登録内容が変更となる場合、企業は事業登録内容変更の届出を企業登録機関に行う必要がある。

b. 期限について

 投資法によると、有効な申請書類を受領した日から10日間内に工業団地管理委員会はIRCの変更手続きを実施すると規定されている。ただし、実務上、当変更手続きは税関当局からの回答を得る必要があるので、規定の期間より時間がかかる可能性がある。

c. 必要書類について

・投資プロジェクトの変更に関する要求書(フォーム AI11.h、通達03/2021/TT-BKHDT)
・投資プロジェクトの提案書(フォーム AI2、通達03/2021/TT-BKHDT)
・変更に関する投資家の決定書(任意のフォーム)
・変更理由の説明書(任意のフォーム)
・投資プロジェクトの実施に関する報告書(フォーム AI12、通達03/2021/TT-BKHDT)
・過去2年間の監査済み財務諸表
・IRC、事業者登録証明書(公証コピー)
・委任状(申請書を提出し、結果を受け取る人への)

 なお、各地方により当局見解が異なる場合があるため、変更手続きの実施の前に、必要書類リスト及び詳細な手続きについて、工業団地管理委員会及び税関当局に確認することを勧めたい。

おわりに
 上述した通り、EPE企業からNon-EPE企業、またはその逆への変更手続きの過程において、税関当局の事前調査の実施など、時間を要することが予想される。変更手続きを実施される企業におかれては、本レポートを活用いただき、必要手続きに備えていただければ幸いである。

参考文献
通達38/2015/TT-BTC
通達39/2018/TT-BTC
通達03/2021/TT-BKHDT
政令18/2021/ND-CP
政令31/2021/ND-CP
投資法61/2020/QH14

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