Reportレポート

返品の際のVATインボイスの発行に関する最新情報

2023/12/17

  • Mai Thi Dung

 ベトナムにおいて、顧客に商品を販売およびサービスを提供する際、売り手は買い手に対してVATインボイスを発行する必要がある。その後、品質等の問題によって商品が返品された場合、VATインボイスはどのように処理する必要があるのか。本稿では、返品があった際のVATインボイスの処理方法に関する現行規定や税務当局の見解、および当社の見解について説明する。

1.以前の規定について
 返品があった際の処理に関して、以前は2014年3月31日付で発行された「通達39/2014/TT-BTC」が適用されていたが、2022年7月1日をもって失効となった。なお、当該通達の付録4、2.8項目には以下のように規定されていた。

・組織または個人が商品を購入し、売り手がVATインボイスを発行したものの、買い手が商品を受領した後に品質等の問題によって商品の一部または全部を返品した場合、買い手は「品質の問題による返品」という摘要内容で、売り手に対してVATインボイスを発行する必要がある。

・買い手がVATインボイスを発行することができない場合、買い手および売り手間で返品合意書を作成し、売り手は買い手に対して発行したVATインボイスを回収する必要がある。返品合意書には、返品理由、商品名、数量、税抜き金額、VAT額の内容を明記する必要がある(例えば、買い手が個人事業を行わない個人や駐在員事務所である場合は、VATインボイスを発行することができない)。

 上記のとおり、2022年7月1日以前は、商品の品質等の問題によって商品の一部または全部が返品された場合、原則として買い手は売り手に対してVATインボイスを発行する必要があった。

2.現行の規定について
 現在は、2020年10月19日付で発行された「政令123/2020/ND-CP第4条1項」および2021年9月17日付で発行された「通達78/2021/TT-BTC」が適用されている。これらの規定では、商品を販売またはサービスを提供する際、売り手は買い手に対してVATインボイスを発行する必要があると規定されている。しかし、返品があった際のVATインボイスの取り扱いについては特段規定されていない。

3.税務総局および地方税務局の見解について
 税務総局が2023年5月29日に公表した「オフィシャルレター(OL)No. 2121/TCT-CS」および2023年10月11日に公表した「OL No. 4511/TCT-CS」では、以下のように記載されている。

・組織または個人が商品を購入し、売り手がVATインボイスを発行したものの、買い手が商品を受領した後に品質等の問題によって商品の一部または全部を返品した場合、発行した売上インボイスを取り消しもしくはインボイスを調整したための返品インボイスを、売り手が発行する必要がある。

・上記の返品インボイスの発行と同時に、売り手および買い手間の返品合意書も作成する必要がある。

 上記の税務総局の案内を受けて、ほとんどの地方税務局もこれに従い、返品があった際には売り手が返品インボイスを発行する必要があるとの見解を示している(例えば、ハノイ税務局によるOL No. 73896/CTHN-TTHTおよびホーチミン市税務局によるOL No. 8999/CTTPHCM-TTHT)。

 一方で、買い手がインボイスを発行する必要があるとの見解を示している地方税務局も存在する(例えばビンディン省によるOL No.3168/CTBDI-TTHT)。しかし実務上、ほとんどの企業は、税務総局やハノイ市税務局およびホーチミン市税務局が公表しているOLの見解に従い、売り手が返品インボイスを発行している状況である。

4.今後の展望
 2023年8月29日に財務省が公表したOL No. 9206/BTC-TCTには、政令123/2020/ND-CPの改正について、地方の政府機関等に意見を求める記載があった。さらに、返品の際には、売り手が返品インボイスを発行する義務がある旨を政令に明記するべきだという提案もあった。

 また、電子インボイスの普及に伴い、現在、電子インボイスデータを税務当局のシステムとリンクさせる仕組みが構築されている。そのため、売り手が返品インボイスを発行した管轄の税務局は、容易かつ正確に売上高・インボイス上のVAT額、VAT申告書上のVAT額・法人税等の比較照合作業ができるようになる。

おわりに
 税務総局やほとんどの地方税務局は、売り手が返品インボイスを発行する必要があるとの見解を示している。また財務省も、政令123/2020/ND-CPの改正について地方政府機関等に意見を募っており、売り手が返品インボイスを発行する点について肯定的な見解を示している。以上に鑑み、売り手が返品インボイスを発行することについて異論はないが、今後の返品インボイスに関する動向を引き続きフォローしていく必要があるだろう。将来、正式な案内または政令が発行された場合は、改めて情報を案内する予定である。

参考資料
2014年3月31日付の通達39/2014/TT-BTC
2020年10月19日付の政令123/2020/ND-CP
2023年5月29日付のOL No. 2121/TCT-CS
2023年7月19日付のOL No. 8999/CTTPHCM-TTHT
2023年8月29日付のOL No. 9206/BTC-TCT
2023年9月13日付のOL No. 3168/CTBDI-TTHT
2023年10月11日付のOL No. 4511/TCT-CS
2023年10月16日付のOL No. 73896/CTHN-TTHT

M000112-177
(2023年12月13日作成)

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