Reportレポート

商品輸出およびサービス輸出を行う企業における付加価値税(VAT)還付に関する注意点

2023/11/13

  • Mai Thi Dung

 商品の輸出およびサービスの輸出を行う企業は、法令に定められた条件を満たす場合、VATの還付を受けることができる。本稿では、商品の輸出およびサービスの輸出を行う企業におけるVAT還付に関する規定や注意点について説明する。

1.VAT還付の条件
通達130/2016/TT-BTCに基づき、商品の輸出およびサービスの輸出を行う企業は、次の条件を満たす場合、VAT還付を申請することができる。
・商品の輸出またはサービスの輸出を行っている場合
・商品の輸出・サービスの輸出から控除できる仕入VATの残高が3億ドン以上の場合

 企業が、輸出と国内販売のどちらも行っている場合、商品の輸出・サービスの輸出から控除できる仕入VATのみ、VAT還付の対象となる。商品の輸出・サービスの輸出から控除できる仕入VATは、VAT還付の申請期間における、企業の総売上高に占める商品の輸出・サービスの輸出における売上の比率に基づいて計算することができる。

2.VAT還付の申請書およびプロセス
(1)VAT還付の申請書および関連書類
商品の輸出およびサービスの輸出に関するVAT還付を申請するためには、次の書類を準備する必要がある。
・VAT還付の申請書
・仕入商品・サービスのVATインボイス、証憑の一覧
・関税法に従って通関された輸出商品の税関申告書の一覧

上記以外にも、税務局から説明を求められた際に円滑に対応できるよう、以下の書類を前もって準備しておく必要がある。
・仕入VATインボイス、売上VATインボイス
VATインボイスの原本(現在は政令123/2020/ND-CPが適用され、電子形式でのインボイスの発行が求められている。そのため現在は、電子インボイスのXMLファイルを準備すればよい)

・契約書
 契約書が外国語で締結されている場合、ベトナム語の翻訳版も準備する必要がある。また、直近の支払銀行口座情報および入金銀行口座情報を契約書に明記し、契約書に記載された銀行口座情報が、銀行送金証明書上の支払銀行口座情報と一致している必要がある。この点について、税務局から指摘される事例が増えているので留意してほしい。

・通関書類(輸出取引の場合)

・銀行送金証明書(2,000万ドン以上の取引の場合)
銀行送金証明書に支払先の情報を明記する必要がある。支払先の情報が明記されていない場合、銀行による送金承認書類を準備する必要がある。

・その他の書類
輸出入取引ごとの情報がわかる在庫輸出入表、商品の輸出・サービスの輸出に関するリスト、検収書、納品書、債務相殺合意書など

(2)VAT還付のプロセス
 企業がVAT還付に関する申請書類を提出し、税務当局から受領通知を受け取った後、受領通知に記録された日から3営業日以内に税務当局は申請を処理し、VAT還付の申請に対する受理通知もしくは還付否認通知を発行する。

 VAT還付申請の受理通知を企業が受け取った後、税務当局はVAT還付の申請書類を審査し、VAT還付申請に関連する説明と追加データ・書類を求め、書類を分類し、税務調査を行う。税務当局が還付申請を受理した日から40日以内に、VAT還付の条件を満たした場合は還付承認通知が発行され、VAT還付条件を満たさない場合は還付否認通知が発行される。

3.近年のVAT還付の実務および留意点
(1)近年のVAT還付の実務
 VAT還付の手続きに関する規定では、VAT還付の申請書類が受領されてから結果通知が発行されるまで、1カ月半から2カ月ほどかかるとされている。しかし実務上は、特に2022年末頃から、VAT還付の調査期間が長引いている。場合によっては1年以上続くこともあり、資金不足に陥っている企業にとっては、資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性がある。

 調査期間が長引くようになった理由の1つは、VAT還付に関して多くの違反や不正が発見されたことにより、調査が厳しくなったためである。例えば、税務局は還付申請企業の仕入VATインボイスの中に、次のような企業のVATインボイスが含まれているかどうかを調査し、該当する場合は控除対象から除外するようになった。
・登録された住所と実際の拠点が乖離している企業
・休眠中の企業
・過去に脱税行為をしたことがある企業
・適切に申告・納付していない企業
・違法インボイスを売買している企業

 また、2023年5月16日付で税務総局からオフィシャルレター(No.1798/TCT-TTKT)が発行された。当該レターにおいて、上記のようなリスクのある524の企業の名簿が公表され、各税務局および税務署に対し、不正なインボイスの検出に注意を払うよう要求した。

(2)みなし輸出を行う場合のVAT還付の留意点
 みなし輸出を行う場合、企業は顧客がベトナムに拠点を有するかどうかに注意する必要がある。現行の規定(通達38/2015/TT-BTC)では、みなし輸出はベトナム企業から「ベトナムに拠点を持たない外国企業」に販売する一方、当該国外企業が指定する他のベトナム企業に納品することとされている。

 この点、ベトナム貿易管理法(Law 05/2017/QH14 foreign trade management in Vietnam)では、ベトナムで経営活動を行っていない企業、ベトナムの企業に対して投資活動を行っていない企業、ベトナムに駐在員事務所や支店がない企業を、「ベトナムに拠点を持たない外国企業」と定義している。そのため、ベトナムに支店・駐在事務所を有する企業や投資活動のある外国企業との取引は、みなし輸出として認められず、VAT還付の税務調査で指摘されるリスクがある。

 ベトナムに拠点を有する外国企業とみなし輸出を行った場合、関連の仕入VATの還付を受けることができず、さらに売上VATを追加徴収されるリスクも考えられる。そのため、ベトナムに拠点を有する外国企業とは、みなし輸出取引を行わないよう注意する必要がある。

(3)非関税地域で建設・設置活動を行う場合のVAT還付に関する注意点
 通達219/2013/TT-BTC第2条の規定では、海外または非関税地域における建設および設置活動の際に持ち込む原材料などについては、税関申告が不要とされている。しかし、通達80/2021/TT-BTCでは「関税法に従って通関された輸出商品の税関申告書の一覧」は、VAT還付にあたって必要な書類と規定されている。また、通達38/2015/TT-BTC(その後、通達39/2018/TT-BTCで改正)第75条では、輸出加工企業(EPE)が生産工場、事務所の建設、設置のために非関税地域に原材料を持ち込む際、EPEの管轄税関署で税関手続きを行う必要があると規定されている。

 これらの規定を基に、最近では、税務当局が非関税地域での建設および設置活動を行う納税者に対し、税関申告書の提出を求める傾向がある。そのため、非関税地域で建設・設置活動を行う場合は、税関申告を検討するか、リスク回避のために管轄税務局や税関局にオフィシャルレターを提出して事前に意見を聞くことを推奨する。

おわりに
 商品の輸出またはサービスの輸出を行う際のVAT還付に関する規定や注意事項について説明した。VAT還付の調査には長い時間がかかり、多くの困難が伴うことが多い。しかし、現行の規定を適切に理解し、慎重に書類を準備・保管しておくことで、還付調査に円滑に対応することができる。また、還付に時間がかかることを把握し、事前に対策しておくことで、企業の事業計画や財務計画に影響が及ぶのを防ぐことができる。

参考
・通達219/2013/TT-BTC
・通達130/2016/TT-BTC
・法律38/2019/QH14(租税管理法)
・通達80/2021/TT-BTC
・通達39/2018/TT-BTC

M000112-176
(2023年11月12日作成)

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