Reportレポート

法人税の仮納税に関する最新の規定について

2023/01/17

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 2022年10月30日にベトナム政府は、政令126/2020/ND-CPを修正・補足する政令91/2022/ND-CPを発行した。従来の政令126/2020/ND-CPでは、「会計年度の第1・第 2・第3四半期に支払う法人税仮納税総額は年次確定申告による法人税総額の75%以上でなければならない」と規定されていた。一方、政令91/2022/ND-CPにおいて、 「会計年度の第1・第2・第3・第4四半期に支払った法人税仮納税総額は年次確定申告による法人税総額の80%以上でなければならない。」と変更され、2021年会計年度から遡って適用されている。
 法人税の仮納税について、法令の変遷を以下の表で詳しく説明する。

法令 (1) 2007年 6月14日付の通達60/2007/TTBTC
(2) 2011年 2月28日付の通達28/2011/TTBTC
2014年10月10日付の通達
151/2014/TTBTC第17条
(1) 2020年10月19日付の政令126/2020/NDCPの第 8条第 6項ポイント4
(2) 2019年 6月13日付の2019年税務行政法
(1) 2022年10月30日付の 政令91/2022/NDCP
(2) 2019年6月13日付の2019年税務行政法
会計年度 2007年~2013年 2014年以降 2021年 2021年以降
内容 •四半期毎の法人税仮申告書類の提出が必要。
•申告納税の期限:納税義務が発生した四半期の翌四半期の30日まで
•四半期毎の法人税仮申告書類の提出が不要。
•業績に基づき、納税者は仮納税総額を四半期毎に支払う。申告納税の期限:納税義務が発生した四半期の翌四半期の30日まで
•第4四半期の法人税の仮納税総額の納税期限までに支払う法人税額の仮納税総額は、年次確定申告による法人税総額の80%以上でなければならない。
•仮納税総額の不足分に対して、第4四半期納税期限の最終日の翌日から延滞利息が課される。
•四半期毎の法人税仮申告書類の提出が不要。
•業績に基づき、納税者は仮納税総額を四半期毎に支払う。四半期毎の納税期限:翌四半期の最初の 月の30日まで
•会計年度の第1・第2・第 3四半期に支払う法人税仮納税総額は、年次確定申告による法人税総額の75%以上 でなければならない。
•仮納税総額の不足分に対して、会計年度第 3 四半期納税期限の最終日の翌日から国家予算に不足分を納税した日まで延滞利息が課される。
•四半期毎の法人税仮申告書類の提出が不要。
•業績に基づき、納税者は仮納税総額を四半期毎に支払う。四半期毎の納税期限:翌四半期の最初の月の 30日まで
•会計年度の第1・第2・第3・第4四半期に支払う法人税仮納税総額は、年次確定申告による法人税総額の 80%以上でなければならない。
•仮納税総額の不足分は、会計年度第4四半期納税期限の最終日の翌日から国家予算に不足分を納税した日の前日まで延滞利息が課される。

 国家予算収入を増加させることを目的に、「法人税額の仮納税総額は年次確定申告による法人税総額の80%以上でなければならない」との規定を7年間継続した後、政府は政令126/2020/ND-CPを発行し、 仮納税に関する規定を変更した。一方で、この変更は企業に影響を与えることになった。以下が主な理由である。

•2021年第 2四半期・第3四半期は、新型コロナウイルスの影響により、全国の多くの省や都市の機能が低下し、同時に多くの企業が事業を停止した。
•コロナ対策後、2021年第4四半期に企業は徐々に事業を回復している。年度末頃には多額の利益をあげる企業も相当数あった。
•新型コロナウイルスの影響がなくても、第3四半期に1年間の法人税総額の見積を企業に要求することは時間的に不合理であり、企業のキャッシュ・フローにも影響を与える可能性がある。団体や企業からさまざまな意見を受け、企業と納税者にとって効果的な条件で経済発展を促進することを目的に、2022年10月30日、政府は法人税の仮納税総額に関する規定を修正する政令91/2022/ND-CPを発行した。

≪注意点≫
1.第4四半期まで年間の法人税の仮納税総額を納税する場合
・現在の規定によると、四半期毎の法人税の仮納税総額の計算と納税期限は、次の四半期の最初の月の30日である。支払うべき税金は、四半期毎の業績に基づく。原則として、企業に納税義務が発生する場合、上記の期限を超えると延滞利息が課せられる。

・現在、税務局のシステムでは、仮納税総額が年次確定申告による法人税総額の 80%を下回った場合に延滞利息が課されることを前提としている。そして、延滞利息が課される時点は会計年度第4四半期納税期限の最終日の翌日からである。

・そのため、四半期毎の法人税を仮に計算・納税しない場合、今後の税務検査・調査の際に延滞利息を指摘されるリスクがある。企業は利益がある場合、税務リスクを最小限に抑えるために四半期毎に仮納税総額の計算・納税をすることを推奨する。利益がない場合は対応不要である。

2.規定による仮納税総額の過少納税するリスクを回避するための留意点
 仮納税総額の過少納税によって延滞利息が課されるリスクを回避するために、企業は以下の点にご留意いただきたい。
・生産・経営の計画及び管理を行う
・四半期毎に仮納税総額を計算・納税する
・税務と会計の差異の調整・見積を行う

3.政令 91/2022/ND-CPに基づき2021会計年度の法人税の仮納税総額に関する規定を遡及適用する場合の留意点
・納税者が2021課税年度の第1・第2・第3四半期に支払った仮納税総額が、年次確定申告による法人税総額の75%以上である場合、政令91/2022/ND-CPの適用は不要である。

・ 納税者が2021課税年度の第1・第2・第3四半期に支払 った仮納税総額が、年次確定申告による法人税総額の75%を下回っている場合、延滞利息(1)が発生する。その際、政令91/2022/ND-CPを適用できるかどうかは、以下のように判断する。
-再計算する際に、2021課税年度の第1・第2・第3・第4四半期に支払った仮納税総額が、年次確定申告による法人税総額の80%以上である場合、延滞利息は発生しない。この場合、政令91/2022/ND-CPを適用できる。
-再計算する際に、2021課税年度の第1・第2・第3・第4四半期に支払った仮納税総額が、年次確定申告による法人税総額の 80%を下回っている場合、延滞利息(2)が発生 する。政令91/2022/ND-CPを適用するためには、延滞利息(2)が延滞利息(1)よりも低い必要がある。

・税務調査で税務局の担当官が、政令126/2020/ND-CPに従い仮納税総額の不足分に対する延滞利息を計算したが、政令91/2022/ND-CPに従い仮納税総額を改めて計算すると延滞利息が減る場合、企業は以下の作業を実施する必要がある。税務管理法 38/2019/QH14第 VIII章及び第60条によると
-納税者は、政令91/2022/ND-CPに添付された付録のフォームNo.01/GTCNを使用し、延滞利息が発生した税務当局に、延滞利息の減少調整の要求書面を提出する。
-減少調整後、超過した税金・遅延利息・罰金は、次回の税金・遅延利息・罰金と相殺されるか返金される。
-納税者がまだ支払っていない税金、遅延利息、罰金の相殺を要求する場合、過払が発生した日から税務管理機関が相殺した日までの期間での相殺分に対して延滞利息は課されない。

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