Reportレポート

付加価値税申告と法人税確定申告の間で生じる申告売上額の差異

2023/02/01

  • Vo Thi Nguyen Linh

はじめに
 税務調査において、当年度のVAT申告上の売上合計及びCIT確定申告上の売上合計の整合性は、税務当局により調査される非常に基本的 な項目の1つである。両者に差異が生じている場合、税務当局に合理的な説明を行うためにも、会社は差異の原因を理解する必要がある。本稿では、当該差異の主な理由をまとめる。

1.サービス売上の計上時点
1) VAT上の取り扱い
 サービス提供を行った場合、売上の計上時点はインボイス発行時点、または(a)サービス提供の完了時、または(b)金銭の受領時のいずれか早い時点と定められている。以下にて例を示す。

例1
 2020年12月2日に、人材紹介会社A社と事業会社B社間で人材採用に関するサービス契約を締結した。2020年12月30日にA社の紹介した人材の採用が決定し、2021年1月10日にB社はA社に採用支援サービス料を振り込んだ。この場合、A社はサービス完了時点である2020年12月30日にインボイスを発行し、2020年12月のVAT申告書において売上として申告する。

例2
 コンサルティング会社 C社とD社間でサービス提供契約を締結した。2020年12月20日に契約を締結し、同日、D社はサービス金額の50%をC社に振り込み、着金した。また、コンサルティング業務は2021年3月20日に完了した。この場合、C社は入金時の2020年12月20日及びサービス完了日の2021年3月20日と2度インボイスを発行するとともに、VAT申告書において売上として申告する( 2020年12月分及び2021年3月分)。

2) CIT上の取り扱い
 CITにおける売上計上時点は、サービス完了時もしくは一部完了時となる。
 例えば2020年12月1日~12月31日の期間でサービスの提供が行われる場合は、仮にインボイス発行や入金が2021年1月中となった場合でも、CITにおける売上計上は2020年12月に行われるべきである。
 つまり、入金時点とサービス完了時点が違う場合(上記例2のケース)、VATとCITで申告売上の差異が発生することになる。

2.賃貸事業売上の計上時点
1) VAT上の取り扱い
 一時点における一括払い、あるいは複数期間にわたる前払い形態での賃貸事業において、VAT上は一時点において支払われた賃貸料、あるいは前払い賃貸料の合計額が、売上として申告される。例えば、オフィス賃貸会社のE社はF社と3年間のオフィスレンタル契約を締結した。2020年12月1日に契約を締結し、同日、F社は6カ月のレンタル料をE社に振り込み、着金した。この場合、E社は入金時の2020年12月1日に、6カ月分の前払い賃貸料の合計を記載したインボイスを発行し、 2020年12月のVAT申告書において売上として申告する必要がある。

2) CIT上の取り扱い
 CIT上は、賃借者により毎期支払われる金額が売上として申告されるという考え方である。そのため賃借者が何年かにわたり前払いを行った場合、会社は、CIT上の売上を計算する際、以下の2つの方法のうちいずれかを選択できる。

  (a) 前払い賃料の全額を売上として申告する
  (b) 前受金合計を前払い年数で割った金額を、毎年の賃貸売上として申告する

 つまり、会社は上(b)を選択した場合、VATとCITで申告売上の差異が発生することになる。

3.贈答品の売上
1) VAT上の取り扱い
 従業員や顧客やサプライヤー等に商品を贈答することがあるが、その際に商工省(Ministry of Industry and Trade)等の管理機関 に登録していない場合、会社は通常の販売取引としてインボイスを発行し、VAT申告書には販売売上として申告する必要がある。

2) CIT上の取り扱い
 以前の規則では、贈答取引が発生した場合、発行したインボイスに基づいて売上として申告する必要があることが規定されていた。しかしCircular78/2014/TT-BTCが発行されて以来、贈答商品の売上の認識は廃止された。すなわち、贈答取引に関しては、VATとCITで申告売上の差異が必ず発生することになる。

4.資産売却の収入
1) VAT上の取り扱い
 固定資産等を売却した際は、インボイスを発行し、VAT申告書には販売売上として申告する必要がある。

2) CIT上の取り扱い
 Circular78/2014/TT-BTCに基 づき、固定資産等の売却は通常の販売売上としてではなく、その他の収入として課税所得に含まれる。すなわち、資産売却取引に関しては、VATとCITで申告売上の差異が必ず発生することになる。

おわりに
 以上、課税期間におけるVAT申告上の総売上と、法人税確定申告上の総売上との差異に関するいくつかの内容について説明した。あらかじめ差異の内容を把握しておくことで、会社が遭遇する可能性のある状況を理解することができ、税務調査時においても合理的な説明の計画を立てることができる。

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