Reportレポート

他省建設事業活動の付加価値税および2022年からの改正点

2023/02/03

  • Quang Thi Hoai Nhu

はじめに
 工事業者については、毎月または毎四半期の付加価値税申告に加えて、他省で建設事業活動を行っている場合は、当該建設工事に係る付加価値税(以下、「他省付加価値税」という)を、管轄税務局に申告・納税する義務がある。本レポートでは、他省付加価値税の申告・納税に関する規定や2022年から適用される改正点について説明する。

1.他省付加価値税について
 工事業者は次の3つの条件を同時に満たす場合、他省付加価値税の申告・納税を行う義務がある(以下、下記の条件を満たす建設事業活動は「他省建設事業活動」という)。

(1)本社がある地域以外の、他の省および中央直轄市の地域で建設事業活動を行っている場合
(2)本社がある省以外の、建設事業活動が行われている他の省および中央直轄市の地域に、従属ユニット(駐在員事務所、従属支店、独立支店)または営業拠点を有していない場合
(3)建設工事金額が、付加価値税込みで10億ベトナムドン以上の場合
・建設事業活動の定義は、国家経済部門のシステムに関する法令、およびその他関連法令に、規定されている。
・他省付加価値税の税額は、「付加価値税控除前の建設工事金額」に特定のパーセンテージを乗じて計算される(パーセンテージの詳細は、後述の「2.2022年1月1日から適用される改正点」を参照)。
・「付加価値税控除前の建設工事金額」は、工事契約金額や工事項目別金額などで構成される。なお工事または工事項目が、多数の省および中央直轄市の地域に関連しており、各地域における建設事業の金額を把握できない場合は、各地域の管轄税務局への申告・納税額は各地域への投資額の割合に基づいて計算される。

申告・納税
(1)他省建設事業活動が発生した際は、その都度、付加価値税のインボイスを発行してから10日以内に、建設事業活動が行われている他省の地域の管轄税務局に他省付加価値税として申告・納税を行う必要がある。その際、付加価値税申告用のフォームNo.5で申告する必要がある。
(2)本社にて付加価値税申告を行う際は、上記(1)で申告した付加価値税控除前の建設工事金額を含めて申告する。
(3)上記(1)で申告・納税した他省付加価値税を、本社において計算された付加価値税額と相殺することができる。

項目 通達156/2013/TT-BTCおよび案内レターの規定(旧規定) 通達80/2021/NĐ-CP(新規定)
(2022年1月1日から発効)
他省付加価値税申告・
納税義務のある対象
本社がある地域以外の、他の省および中央直轄市の地域で建設事業活動を行っている企業(工事業者) 本社がある地域以外の、他の省および中央直轄市の地域で建設事業活動を行うため、工事発注者と直接契約を締結した請負者
税率 2% 1%
本社の付加価値税額から、建設事業活動を行っている他の省および中央直轄市で納税した税額を控除する方法 他の省および中央直轄市で申告・納税した際に発行される納税証明書(01-5/GTGT 付録フォーム)に基づいて、申告・納税した他省付加価値税額を本社の VAT 申告書に記載する。
その後本社で計算された付加価値税額から、他省付加価値税額を控除できる。
新規定が適用されてからは、本社の付加価値税申告書に、他省の管轄税務局で申告・納税した分を申告する必要がない。
税務局は、自身で他省の納税証明書を入手して、他省建設事業活動に伴い納税した付加価値税と、本社の経営活動による申告・納税の付加価値税を相殺する。

※留意点
 上述のとおり、他省付加価値税の申告期限は、インボイスを発行してから 10 日以内である。一方、本社における付加価値税申告は、月次または四半期次で実施するため、工事業者が他省付加価値税申告・納税を本社でまとめて行った場合、他省における申告遅延が発生することになる。この点、どのような措置が適用されるのか法令上明確に規定されておらず、管轄税務局の解釈により措置の内容が異なるため、管轄税務局に問い合わせることを推奨する。しかし、いくつかの税務局の案内やオフィシャルレターに基づき、下記のような処理になると想定される。
 ・脱税行為とはみなされない。他省付加価値税に対する遅延税は課されない。
 ・他省付加価値税申告書の提出が遅れたことに対する、行政罰金が科される。

おわりに
 以上、他省付加価値税申告・納税に関する規定や 2022 年からの改正点について説明した。規定を順守するため、工事業者は他省の付加価値税の規定を把握し、法令や規定に従って申告・納税を行う必要がある。

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