2025年投資法における外国投資家向けの主な改正点
2026/08/21
- I-GLOCAL.CO.,LTD ホーチミン事務所
- Bui Thuy An
エグゼクティブサマリー
① 改正の概要 — 2025年投資法(第143/2025/QH15号)が2026年3月1日に施行され旧投資法を廃止。管理方針を「事前審査」から「事後監督」へ転換し、手続簡素化でFDI企業の事業運営を容易にする。
② 条件付事業分野の見直し — 条件付事業分野を38削減し、20分野を「事前審査(tiền kiểm)」から「事後監督(hậu kiểm)」へ転換(2026年7月1日施行、詳細一覧は未公表)。
③ FDI設立手続の順序変更(IRC/ERC) — 一定条件下でERCを先に取得しIRCを後から申請可能となり設立期間を短縮できるが、IRC申請期限・許可前の活動範囲・不許可時の扱いは未確定。
④ 活動期間の見直し — 経済区外50年/区内70年の原則は不変だが、ハイテクパーク・集中デジタル技術団地・特別優遇対象等は最大70年まで延長可能。不可抗力・行政手続遅延による遅延期間は活動期間に不算入。
⑤ 特別投資手続の拡大 — 対象エリアに国際金融センター(ホーチミン・ダナン)を追加。対象プロジェクトは投資方針承認・技術審査・環境影響評価・詳細都市計画・建設消防許可等を免除(実施細則は未公表)。
はじめに
2026年3月1日、改正投資法(第143/2025/QH15号)が施行された。これにより、2020年に制定された旧投資法(第61/2020/QH14号)は廃止となる。今回の改正では、ベトナムへの投資・事業に関する手続きやルールが大きく見直された。主なポイントは3点となり、市場参入にかかる時間の短縮、各種手続きのコスト削減、そして外国直接投資企業(以下「FDI企業」)が事業を運営しやすくなる環境の整備である。
1. 条件付投資事業分野に関する管理制度の変更
1-1 条件付投資事業分野の大幅削減
2025年投資法では、2020年投資法と比較して38の条件付事業分野が削減され、ベトナムにおける各種投資・事業活動の市場参入規制が緩和された。
削減対象となった分野には、人材紹介、労働者派遣、商業検査、マンション管理、建築・建設工事施工、外国建設請負業務等が含まれる。一方で、デジタル化の流れを受けて、データ取引プラットフォームの運営、暗号資産関連サービス、個人情報処理サービス等が新たに条件付事業として追加された。
1-2 「事前審査方式」から「事後監督方式」への転換
「事前審査方式」とは事業開始前に行政機関の許可・認証取得を義務付ける仕組みであり、「事後監督方式」とは企業が基準適合を自己申告して事業を開始し、行政が事後の立入検査で確認する仕組みである。2025年投資法では20の事業分野について、従来の「事前審査方式」から「事後監督方式」への転換が予定されている。政府は下記2種類の一覧を公表する予定である。
・事業開始前に許可・認証の取得が必要な分野の一覧
・事前許可・認証方式から、事業条件の公表および事後監督方式へ移行する分野の一覧
なお、現時点では詳細な一覧および施行細則は公表されていない。条件付事業の関連規定が2026年7月1日より有効となるため、それまで政府からの案内を待つ必要がある。
2.FDI企業設立手続の順序変更
ベトナムでFDI企業を設立する際には、2つの証明書が必要となる。
- 投資登録証明書(IRC):投資プロジェクトの登録内容(目的、規模、投資総額、出資者等)を証明するもの。
- 企業登録証明書(ERC):企業の設立および基本情報(企業名、本店所在地、法定代表者、資本金、企業コード等)を証明するもの。
従来は、IRCを取得してからERCを取得する必要があったが、2025年投資法では、一定の条件を満たす場合、ERCを先に取得してからIRCを申請することが可能となった。
この変更により、ERC取得後にオフィス賃貸・人材採用等の事前準備を進めながらIRCを申請できるため、設立から事業開始までの期間を短縮できる。一方、ERC取得後のIRC申請期限、IRC取得前に行える活動の範囲、IRC不許可時の取扱いについては現時点で明確になっていない。
したがって、当面は政府から発行される詳細なガイドラインを注視しつつ、自社にとって適切な投資許可手続の順序(IRC先行かERC先行か)を慎重に検討することが重要である。
3.投資プロジェクトの活動期間に関する規定の見直し
投資プロジェクトの最大活動期間は、経済区外(工業団地・ハイテクパーク等の指定エリア以外の一般地域)では50年、経済区内(政府が指定した工業団地・輸出加工区・ハイテクパーク等の特別開発エリア)では70年が原則であり、この点は従来と変わらない。ただし、以下のプロジェクトについては、最大70年までの延長が可能であることが明確化された。
・ハイテクパークのインフラ整備・運営に関する投資プロジェクト
・ハイテクパーク工業団地
・集中デジタル技術団地
・特別優遇・特別投資支援対象のプロジェクト 等
また、不可抗力や行政手続の遅延等によりプロジェクトが遅れた場合、その遅延期間は活動期間に含めないことが規定された。長期プロジェクトを検討している企業にとって注目すべき改正点である。
4.「特別投資手続」の適用範囲拡大
2025年投資法の第28条により、「特別投資手続」の対象エリアに国際金融センター(ホーチミン市・ダナン市に設置された金融特区)が新たに追加された。「特別投資手続」とは、指定エリア内のプロジェクトに限り、通常であれば必要となる以下の手続を免除できる制度である。
・投資方針承認
・技術審査
・環境影響評価報告
・詳細都市計画策定
・建設・消防分野の許可
上記の手続が免除される代わりに、①法令遵守の誓約書と②プロジェクト提案書(必要に応じて環境・技術評価を含む(ある場合))の2点の提出が求められる。なお、この「特別投資手続」の内容自体は旧規定から変更はない。
対象エリアは、工業団地、輸出加工団地、ハイテクパーク、集中デジタル技術団地、自由貿易団地、経済区内機能区域(経済区内に設けられた工業・輸出加工・観光等の特定目的区画)、そして今回新たに追加された国際金融センターである。ただし、実施手順の詳細はまだ公表されていない。今後公表される政令等を確認する必要がある。
おわりに
2025年投資法は、管理方針を「事前審査型」から「事後監督型」へ転換し、手続の簡素化および制度の柔軟化を進める内容となっている。これにより、外国企業にとってベトナムでのビジネスがより進めやすくなることが期待される。ただし、一部の規定については詳細な施行規則が整備されていないため、新しいルールでの対応を検討する際は、最新の政令・通達を継続的に確認することが重要である。
参考文献
・投資法第143/2025/QH15号
・投資法第61/2020/QH14号
・計画法および投資法の一部改正・補足、並びに官民パートナーシップ投資および入札に関する法律 第57/2024/QH15号

