Reportレポート

保税倉庫を介した販売に関する税務上の留意点

2025/08/25

  • Nguyen Thi Thuy Duyen

はじめに
ベトナムの国際経済への参画が進む中、ビジネス手法の一つとして保税倉庫を活用するケースが増加している。ただし、保税倉庫を通じた取引を実施するにあたり、当該取引の実施条件、関連書類、適用される税制について十分な理解が求められる。
本稿では、保税倉庫の活用に係る税務および通関に関する法令を適切に遵守するために留意すべき主なポイントを整理する。

1.保税倉庫の定義及び保税倉庫を介した販売のケース

1.1 保税倉庫の定義

保税倉庫とは、外部と区画された区域に設置された倉庫であり、保税倉庫業者と商品の所有者との間で締結された保税倉庫契約に基づき、外国または国内から搬入された商品を税関の監督下で一時的に保管・管理し、必要に応じて各種サービスが提供される施設を指す。

1.2 保税倉庫に搬入できる商品

保税倉庫では、以下に該当する商品に対して各種サービスが提供される。
ベトナム国内企業と売買契約がまだ締結されていない外国企業の商品
ベトナム企業が海外から輸入し、国内市場への投入または第三国への輸出を待っている商品
海外から保税倉庫に搬入され、第三国への輸出を予定している商品
税関手続が完了し、輸出を控えている商品
仮輸入期間が終了し、再輸出される予定の商品

2.保税倉庫を通じた販売に関する税務方針

2.1 外国契約者税(FCT)

外国契約者税(Foreign Contractor Tax、以下「FCT」)とは、外国の組織・個人が、ベトナム国内の個人または組織(居住者・非居住者を問わず)にサービスを提供することで得た所得に対して課される、源泉徴収方式の税である。
通達No.103/2014/TT-BTCによれば、商品の引渡場所がベトナム領域内にある場合、または外国契約者が保税倉庫からベトナム国内の引渡先までの輸送費用を負担する場合、当該取引はFCTの課税対象となる。

現在の税務当局の見解では、保税倉庫はベトナムの領域内と見なされる。従って、売主がベトナム国外企業で、買主がベトナム企業(EPEまたはNon-EPE)の取引において、商品が保税倉庫で引き渡される場合は外国契約者税(FCT)の課税対象となる。
保税倉庫を経由して輸入される商品に対するFCTの課税方法は以下のとおりである。
付加価値税(VAT):課税なし(原則として、輸入時ですでに納付されているため。)
法人所得税(CIT):課税売上高は商品代金とし、税率は1%。

ただし、上記の税計算方法は、通常な商品販売取引に適用されるものであり、設置サービスや輸送サービスなど、ベトナム国内で実施されるサービスを伴う販売取引には適用されない。実務上、保税倉庫を通じた販売取引においてサービスが伴うケースは極めて少ないことから、本稿では当該ケースにおける税金計算の詳細について割愛する。

2.2 付加価値税(VAT)及び輸入税

2024年3月13日付の税務総局オフィシャルレターNo. 951/TCT-CS号及び2011年7月26日付No. 2575/TCT-CS号に基づき、保税倉庫を通じた取引における売主のVAT及び買主(輸入者)の輸入税とVATの取り扱いは以下の通りである。

a) 売主に係る付加価値税(VAT)

オフィシャルレターによれば、保税倉庫で商品所有権が移転し、非課税エリア内で取引が完結するため、以下のいずれかのケースにおいてもVATは課税対象外となる。
売主が外国企業またはベトナム企業の場合
買主が輸出加工企業(EPE)または一般企業(Non-EPE)の場合

なお、政令No.181/2025/NĐ-CP号第23条により、企業はVAT課税対象の事業活動に限定して、仕入VATの控除を受けることができる。保税倉庫を介した取引で仕入VATを個別に区別できない場合、月次または四半期ごとに以下の式により按分処理する必要がある。
控除対象仕入VAT=(VAT課税対象の売上 ÷ 総売上)×総仕入VAT(当該課税期間)

b) 買主(輸入者)の輸入時における輸入税及び付加価値税(VAT)

商品が保税倉庫に保管されている間は輸入税が発生しないが、倉庫から搬出される際に輸入税及びVATが発生する。(特例を除く)
買主がベトナム企業(Non-EPE)の場合
輸入時に輸入税及びVATを納税する必要がある。適用税率は品目ごとに異なる。
買主が輸出加工企業(EPE)の場合
当該取引は非関税エリア内の移転に該当するため、輸入税及びVATは免除される。

2.3 インボイスの取扱い

a) 売主がベトナム国内企業(非関税エリア外)の場合
VATを直接法で申告している場合:政令123/2020/NĐ -CP号第8条第2項に基づき、「販売インボイス(hóa đơn bán hàng)」を使用
VATを控除法で申告している場合:政令123/2020/NĐ -CP号第8条第1項に基づき、「VATインボイス(hóađơn GTGT)」を使用する。

b) 売主が輸出加工企業などのベトナム国内企業(非関税エリア中)の場合
自社生産品を販売する場合:政令No.123/2020/NĐ -CP号第8条第2項に基づき、「販売インボイス(hóa đơn bán hàng)」を使用
卸売・小売・その他販売に該当する場合: 政令No.70/2025/NĐ-CP、No.123/2020/NĐ-CP、及びオフィシャルレターNo.18195/BTC-TCHQに基づき「VATインボイス(hóa đơn GTGT)」を使用。
なお、「VATインボイス」を使用する場合、当該商品がVAT課税対象外である旨を明記し、税率及びVAT金額の欄は記載せずに線で抹消する必要がある点に留意が必要である。

おわりに
保税倉庫を通じた所有権の移転は、その利便性から近年増加傾向にある。本稿では、保税倉庫を介した取引に関連する規定や実務、税務総局のガイダンスに基づき、主要な留意点を整理した。実際の取引にあたっては、本項の内容をご参考いただきつつ、必要に応じて事前にフォワーダーや通関当局などの専門家へ相談されることを推奨する。

参考文献
・2024年11月26日付の国会発行付加価値税法 No.48/2024/QH15(2025年7月1日より施行)
・2025年7月1日付の 政府発行政令No.181/2025/NĐ-CP(2025年7月1日より施行)
・2025年7月1日付の財務省発行 通達No.69/2025/TT-BTC(2025年7月1日より施行)
・2025年3月20日付の 政府発行政令No.70/2025/NĐ-CP
・2014年6月23日付の国会発行 関税法 第54/2014/QH13
・2015年3月25日付の財務省発行通達 第38/2015/TT-BTC
・2016年4月6日付の国会発行輸出入税法 第107/2016/QH13
・2015年5月21日付の政府発行政令 第08/2015/ND-CP
・2014年8月6日付の財務省発行通達 第103/2014/TT-BTC

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