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法に反して労働者が労働契約を一方的に解除した際の留意点

2026/02/07

  • Tran Ha My

はじめに

労使関係において労働契約の終了は頻繁に発生することだが、法令に従って適切に行われていない場合、多くの法的リスクを招く可能性がある。実際には、法に反する形で労働者が労働契約を一方的に解除し、雇用者の事業活動や正当な権利利益に悪影響を及ぼす事例も少なくない。したがって、法に反する形での一方的労働契約解除の行為を正しく把握し、こうした場合における雇用者の権利を十分に理解しておくことが重要である。本稿では、上記行為を整理するとともに、雇用者が留意すべきその他の法的課題について説明する。

1. 法に反した労働者の一方的労働契約解除とは

労働者の基本的な権利の一つに、労働契約を一方的に解除する権利がある。しかし、この権利は、労働者が事前の通知期間に関する条件を遵守している場合にのみ認められる。労働者が通知期間の条件を遵守しなかった場合は、その解除が違法な一方的解除と見なされる。

したがって、労働者は理由を示さずに労働契約を一方的に解除することができるが、労働契約の種類や業種・職種ごとに定められた通知期間を遵守する必要がある。

労働契約の種類 特殊な業種・職種 その他のケース
無期労働契約 少なくとも120日前 少なくとも45日前
12ヶ月以上36ヶ月以下の有期労働契約 少なくとも120日前 少なくとも30日前
12ヶ月未満の有期労働契約 労働契約期間の少なくとも1/4の期間前 少なくとも3営業日前

特殊な業種・職種には、航空機の操縦チームのメンバー、航空機整備技術者、外国で操業中のベトナム船舶で働く乗組員、ベトナム企業から貸与され外国船舶で働く船員などが含まれる。また、労働者が管理者である場合、例えば社員総会の会長・メンバー、会社の会長、取締役会の会長・メンバー、社長または総社長、その他会社定款に定める管理職に就く個人なども、特殊な業種・職種と同様の通知期間が適用される。

一方、労働者は次のいずれかに該当する場合には、事前通知なしに労働契約を一方的に解除する権利を有する。たとえば、労働者が契約に基づく職務や勤務地に配置されていない場合、契約で定められた労働条件が保証されていない場合、職場でセクシュアルハラスメントを受けた場合、雇用者が労働契約の履行に影響を及ぼす不正確な情報を提供した場合など。

結論として、労働者が所定の通知期間を遵守せずに、あるいは通知期間が不足したまま労働契約を解除した場合、その行為は違法とみなされる。また、雇用者が当該労働者は通知義務の免除対象に非該当であることを立証できた場合や労働者が正当な通知期間を遵守せずに自己都合で退職する場合も、労働契約の一方的解除に関する法律違反とみなされる。

2. 労働者が負う法的義務

法に反して労働者が労働契約を一方的に解除した場合、労働者は法律で定められた義務を負う。これにより、一部の権利喪失だけではなく、違反行為によって生じた損害に対する賠償義務や、雇用者に対する費用の返還義務を履行しなければならない。主な内容は以下のとおりである。

労働者は退職手当を受け取ることができない
これは、労働者が法に反して一方的に労働契約を解除した場合の法的義務であると同時に、労働契約の終了に関する規定を遵守する動機付けにもなる。一方で雇用者にとっては退職手当の費用が発生させない形で手続きを進めることができる。

労働者は雇用者に対して賠償金を支払わなければならない
賠償金は、労働契約に基づく1ヶ月分の給与の半額と、通知なしで退職した日数に相当する給与額相当分である。雇用者は、賠償金の算定にあたり、第1項で記述された通知期間を基準に、個別のケースごとに未通知日数を特定する。

労働者は勤務期間中に雇用者が負担した教育費用を返還しなければならない
教育費用には、講師への支払い、教材費、学校・クラスの費用、機器・実習用資材、学習支援のためのその他の費用、研修期間中の給与、社会保険料、健康保険料、失業保険料など、正当な証憑に基づく支出が含まれる。労働者が海外研修に参加した場合は、渡航費や研修期間中の生活費も含まれる。なお、法律上、教育費用が雇用者以外の第三者やパートナーによって負担された場合でも、労働者が違法に労働契約を一方的に解除した場合には、当該教育費用を返還する義務がある。

3. その他の留意点

労働者が違法に労働契約を一方的に解除した場合でも、雇用者は労働者に対して、未払いの勤務日分の給与および未消化の年次有給休暇に相当する給与を支払う責任がある。

実務上、多くの場合、労働者は退職時期について雇用者に事前通知を行うものの、法定の通知期間を満たさないケースも見受けられる。しかし、雇用者が労働者の希望どおりの時期での退職を認めた場合、その労働契約の終了は双方の合意によるものとみなされ、労働者による違法な一方的解除とはみなされない。この場合、雇用者と労働者は合意に基づく労働契約の終了手続きを行い、雇用者は合法的な契約終了の場合と同様に、すべての義務を履行する必要がある。

おわりに
法に反して労働者が労働契約を一方的に解除した場合、労働者は一定の法的義務を負うこととなる。したがって、雇用者として、法に反する一方的な契約解除がどのような行為にあたるのかを正確に把握し、労働者が負う義務についても十分に理解しておくことが重要である。

参考文献
・2019年労働法
・政令145/2020/ND-CP
・2020年企業法

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