付加価値税法(法律第48/2024/QH15号)における非現金決済証憑
2025/11/27
- Le Thi Hoang Dung
はじめに
2025年7月1日より、付加価値税に関する法律第48/2024/QH15号が正式に施行されることに伴い、財務省は実務に関する詳細を案内政令No.181/2025/NĐ-CP号(以下「政令181」)を公布した。特に、非現金決済に関する条件は注目すべき内容の一つである。従来と比較して、新しい規定は実務についてより具体的かつ明確に示されており、納税者が手続きを進めやすくなることが期待される。
本稿は、2024年7月16日にIGLウェブサイトに掲載した「非現金決済証憑」に関する報告の続編として、2025年7月1日から適用される新しい規定に基づく非現金決済証憑について解説する。
1. 非現金決済証憑
1.1 非現金決済証憑
そもそも非現金決済とは、2024年5月15日付政令第52/2024/NĐ-CP号によると、組織または個人が振込、小切手、銀行経由の支払依頼書、支払委託、銀行カード、電子ウォレット、その他ベトナム国家銀行が認める決済手段を用いて代金の支払いや送金を行う取引をいう。非現金決済サービスを提供する組織には、ベトナム国家銀行、銀行、外国銀行の支店、信用人民組合、マイクロファイナンス機関、および公益郵便サービス提供企業が含まれる。
今回の政令181では、「非現金決済証憑」が具体的に何を指すのかが明確になった。非現金決済証憑とは、2024年5月15日付政令第52/2024/NĐ-CP号の規定に定められた、非現金の決済サービスまたは決済手段を用いて支払いが行われたことを証明する証憑を指す。ただし、買手が売手の口座に現金を直接入金した場合の証憑は対象外とされている。
以上を踏まえ、政令181によれば、非現金決済証憑の提出が不要とされる支払限度額は、従来の2,000万ドンから500万ドンに引き下げられた。具体的には、付加価値税を含めた500万ドン以上の商品・サービスの購入について、納税者が非現金決済証憑を備えていなければ、仕入付加価値税の控除を認めないと定められている。
1.2 非現金決済と見なされない留意すべきケース
上記のとおり、送金や銀行経由の取立・収納手続きなどは非現金決済サービスとみなされるが、買手が売手の口座に現金を入金した場合の証憑は、税務上、非現金決済証憑として認められない点に留意する必要がある。
さらに、非現金決済サービスを提供する組織とは、ベトナム法律に基づき設立・運営される組織を指すと解釈されるため、PayPalやAlipayなどのような外国法に基づき設立され、ベトナム国内に法人格や支店を有しない組織による決済手段は、税務上、非現金決済サービスとは認められない。
加えて、納税者が1回当たりの取引額が500万ドン未満の商品やサービスを同日に複数回購入し、その合計額が500万ドン以上となる場合、仕入付加価値税の控除が認められるのは、非現金決済証憑がある取引に限られる。
2. 非現金決済と認められるいくつかの特別なケース
2.1 債務債権相殺の場合
債務債権相殺の手段は親子会社間や同一グループ内で多く見られている。旧規定と比べてに大きな変更はないが、税務上、非現金決済として認められるのは以下の2つの場合に限られる。
・仕入商品の価値・サービス購入代金を、販売した商品・サービス、または貸し付けた商品の価値と相殺する場合(条件は契約書に債務債権相殺できることを明記、債権債務照合書、相殺合意書があること)
・仕入商品の価値・サービス購入代金を、ローンと相殺、もしくは第三者を介した債務と相殺する場合 (条件は事前のローン契約に債務債権相殺できることを明記、および貸付側の送金証憑があること)
なお、債務債権相殺後に500万ドンを超える残額がある場合、その残額については非現金決済証憑を備える必要がある。
2.2 従業員による立替払いの場合
実務上、従業員が会社に代わって費用を立替払いし、その後会社が精算するケースがよく見られる。旧付加価値税法では本件について規定されておらず、法人税法にのみ規定が定められていたが、新しい付加価値税法では具体的な指針が追加され、一貫性が図られた。
立替払いが非現金決済として認められるためには、以下の条件を満たす必要がある。
・従業員による立替払いを委任する旨が、財務規程または社内規程に定められていること
・従業員が立替払いを行う際に、非現金の決済方法を用いること
・会社が従業員に対して精算を行う際も、非現金の決済方法を用いること
2.3 割賦購入と延払購入の場合
割賦購入または延払購入により商品・サービスを購入し、購入価額が500万ドン以上の場合、買手は商品・サービスの売買契約書および付加価値税インボイスに基づき、仕入付加価値税の控除を行うことができる。ただし、契約または契約付属書に定められた支払期日までに非現金決済証憑を備えていない場合、すでに控除した仕入付加価値税を減額調整しなければならない。
また、ヴィンロン省税務局のオフィシャルレターNo.434/VLO-QLDN2号の案内によれば、契約または契約付属書に基づく延払期限を過ぎてから会社が非現金決済証憑を取得した場合も、当該証憑に基づく仕入付加価値税の控除は認められない点に留意が必要である。
2.4 その他のケース
上記3つのケース以外にも、以下の場合は非現金決済として認められる。
・買手が売手の金銭または資産に係る追徴ための国家機関の強制執行決定に基づき、国家財庫に納付する場合
・株式、社債による決済、または第三者を介した非現金決済を行う場合(条件はその決済方法について関係当事者間で契約書等の書面により明確に合意していること)
おわりに
本稿では付加価値税法第48号に基づく非現金決済の条件について述べた。従来、法人税に関しては通達78/2014/TT-BTCにおいて「非現金決済証憑は付加価値税法の規定に従う」と定められていた。しかし、2025年6月14日に公布され、同年10月1日より施行される法人税法2025では、「法律の規定による非現金決済証憑」とのみ概括的に規定され、詳細な指針は示されていない。
新しい税法が発効された一方で、現時点では施行に関する詳細な案内がまだ公布されていない。企業は非現金決済に関する新しい規定を付加価値税と法人税の両方の観点から正しく把握し、適切に対応できるよう、引き続き情報を確認することが推奨される。
参考文献:
・付加価値税法No.48/2024/QH15号
・政令181/2025/NĐ-CP(2025年7月1日公布)
・政令52/2024/NĐ-CP(2024年5月15日公布)
・通達18/2024/TT-NHNN(2024年6月28日公布)
・IGLウェブサイトに掲載したレポート「非現金決済証憑の条件に係る税務上の留意点」https://www.i-glocal.com/report/240716/
・ヴィンロン省税務局の公文書第434/VLO-QLDN2号
・法人税法67/2025/QH15号


