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2025年7月1日施行の新付加価値税法における還付申請の変更点

2025/05/26

  • Pham Van Huong

2024年11月26日、国会は新付加価値税法(48/2024/QH15、以下「2024年VAT法」)を可決した。これにより、現行の付加価値税法(13/2008/QH12、以下「2008年VAT法」)およびその改正・補足文書が置き換えられる。2024年VAT法は2025年7月1日から施行され、特に付加価値税(VAT)の還付に関して重要な変更がある。本レポートでは、それらの変更点をわかりやすく整理する。

1. 投資プロジェクトにおけるVAT還付の変更点

i. 投資法に基づく投資プロジェクトはVAT還付の対象となる
2008年VAT法では「新規投資プロジェクト」のみが投資対象として明記されていた。しかし、実務においては、税務当局が初期投資プロジェクトにおける複数の投資フェーズや拡張投資プロジェクトについても還付を認めるケースが多く見られる。これを踏まえ、2024年VAT法では、還付対象となる投資プロジェクトを「投資法に基づく投資プロジェクト」と規定している。これには、新規投資プロジェクトや拡張投資プロジェクトが含まれ、投資段階にあるプロジェクトが該当する。なお、投資フェーズが複数に分かれているプロジェクトや、多岐にわたる投資項目を含むプロジェクトも還付対象となるが、企業の固定資産を形成しない投資プロジェクトは除外される。このように、2024 年 VAT 法は、投資法における投資プロジェクトの概念と整合する形で規定されている。

ii. 投資段階で発生した仕入VATは還付対象となる
現行法では、還付対象となる税額が「投資に使用するために購入した商品・サービスのVAT」と規定されていた。これに対し、2024年VAT法では「投資段階で発生した仕入VAT」と明確化された。これにより、例えばマーケティングや広告費用にかかるVATは還付対象となる。

iii. 投資プロジェクトの完了日の定義
現行法では、投資プロジェクトの完了日が明確に定められていないため、還付対象となる仕入税額や事業活動に応じたVAT申告の開始日を決定することが難しくなっていた。2024年VAT法では投資プロジェクトの完了日を「投資プロジェクトまたは投資フェーズ・投資項目の売上が発生した日」と規定された。ただし、以下の売上は含まれない。
テスト段階で発生した売上
財務活動による売上
投資プロジェクトの原材料の売却による収入

iv. VAT還付申請の期限設定
2024年VAT法では、投資フェーズに対する還付申請が提出されていない場合、投資プロジェクト完了後1年以内に還付申請を行う必要がある。従来は期限の明確な規定がなかったが、新法では期限を過ぎた場合、還付が認められなくなる点に注意が必要である。

v. 定款資本の出資要件
制度上、企業が登録した定款資本金を全額出資していない投資プロジェクトに対しては、VATの還付は認められていない。
現行法においては、出資時期についての明確な規定がなく、実務上さまざまな解釈がなされてきた。投資法や企業法では、投資プロジェクトの進捗に応じて定款資本金を段階的に出資することが認められており、企業設立時に全額を一括で出資する必要はない。このような状況を踏まえ、2024年VAT法では「還付申請時点で定款資本金が登録通りに出資されていない場合、VATの還付は認められない」と明記された。したがって、VAT還付を受けるには、還付申請時点で定款資本金を全額出資している必要がある。

2. 輸出企業に対するVAT還付の変更点

従来の規定では、企業が輸入した商品を他国に輸出し、関税法に基づく税関区域内で輸出手続きを行った場合に、VATの還付が認められていた。
しかし、2024年VAT法ではこの税関区域で輸出手続きを行う輸出取引輸入した商品を他国に輸出する取引)に関するVAT還付を廃止することが明記された。そのため、輸出企業は2025年7月1日までにVAT還付申請を行うことが推奨される。
尚、輸出加工企業(EPE)への販売におけるVAT還付はこれまで同様に実施可能である。

3. VAT5%の税率が適用される商品・サービスを提供する企業への還付制度の新設

VAT5%の税率が適用される商品・サービスを提供する企業も、VAT10%での仕入れを行うことが多い。しかし、これまでこの差額分のVAT還付は認められていなかったため、未控除のVATが累積し、企業の資金繰りに影響を与えていた。

2024年VAT法ではVAT5%の税率が適用される商品・サービスを提供する企業に対して、以下の新たな還付制度が導入された。
12カ月連続または4四半期連続で未控除VATが300,000,000 VND以上の場合、VAT還付が可能。
売上に複数のVAT税率が適用される場合、政府が定める配分比率に基づき還付を受けることができる。

4. 企業の所有権移転、事業転換等に関する付加価値税還付規定の廃止

現行法では、VATを控除方式で納付している事業者は、企業の所有権移転、事業転換、合併、統合、分割、分離、解散、破産、または活動停止(支店閉鎖)の場合に、過剰納付分や控除されていないVATの還付を受けることができる。

しかし、2024年VAT法により、還付対象が以下のように制限された。
企業の所有権移転、事業転換、合併、統合、分割、分離、活動停止(支店閉鎖)に関するVAT還付規定は廃止。
VATの還付は、企業の解散または破産の場合のみ認められる

そのため、これらの事業形態変更を予定している企業は、2025年7月1日までに還付申 請をすることを推奨する。

 5. まとめ

2024年VAT法は、VATの還付に関する規定を大きく変更した。主なポイントを以下にまとめる。

項目 変更点
投資プロジェクト 投資法に基づく投資プロジェクトはVAT還付の対象
還付対象となる税額は投資段階で発生した仕入VAT
投資プロジェクト完了後1年以内に還付申請を行う必要あり
還付申請時点での定款資本金全額出資が必要
輸出企業 輸入品を、関税法に基づく税関区域内で輸出する取引輸入した商品を他国に輸出する取引)に対するVAT還付を廃止
VAT5%の税率が適用される商品・サービスを提供する企業 未控除VATが一定額を超えた場合に還付を認める新制度を導入
企業の所有権移転、事業転換、合併、統合、分割、分離、活動停止(支店閉鎖)に関するVAT還付規定 廃止

企業は、新法施行に備えて早めの対応が求められる。還付対象外となる取引の影響を確認し、特に投資プロジェクトや資金計画の見直しを検討することが重要である。

参考文献:
2008年付加価値税法(13/2008/QH12)
2024年付加価値税法(48/2024/QH15)

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