未使用分の土地賃貸料に係る法人税の取り扱い
2025/05/22
- Le Ngoc Quoc Bao
ベトナムにおける投資・事業活動において、工場や倉庫の建設、プロジェクトの実施を目的として企業が土地を賃借するケースが多い。しかしながら、企業が土地賃貸契約を締結し、賃貸期間全体に係る賃料も一括で支払ったものの、当該土地の全部または一部が実際には使用されていないというケースも少なくない。このような場合、未使用部分に係る土地賃貸料が法人所得税の課税所得を算定する際に損金として認められるのかという論点が生じることになり、実務上、判断に迷うケースが散見されている。
本稿では、このような未使用部分の土地賃貸料に係る法人所得税上の取り扱いについて、関連規定の解釈および実務上の適用事例について説明する。
1. 法令に基づく法人税の損金算入要件
通達96/2015/TT-BTC(通達78/2014/TT-BTCの改正・補足)では、ある支出が損金算入可能な費用として認められるためには、以下の条件を満たす必要があることが規定されている。
a)当該支出が企業の生産・事業活動に実際に関連して発生していること
b)正規のインボイスや証憑書類がすべて揃っていること
c)2,000万ドン以上のインボイスについては、銀行送金等の非現金支払い証明書類が全て揃っていること
加えて、法令上、以下のような規定も設けられている。
・無期限の使用権を有する土地については、減価償却の対象とはならず、法人所得税の課税所得を算定する際に損金算入できない。
・使用期限付きの土地使用権については、法令に基づく適切な手続きを経ていることや、正規のインボイスや証憑書類が揃っていることに加え、当該土地が実際に事業活動に使用されている必要がある。この場合には、土地使用権証明書に記載された使用期間に基づいて費用を配分し、損金算入することが認められる。
上記を踏まえ、まだ実際に使用が開始されていない土地に係る賃貸料の支出については、その支出が発生した時点で「事業活動に使用されている」とみなされるかどうかを慎重に検討する必要がある。
2. 税務局の案内
税務局が2025年3月14日付けで発行したオフィシャルレターNo.140/CTTPHCM-TTHTにおいては、「事業活動に使用されていない土地に係る支払済の賃貸料については、法人所得税の課税所得を算定する際に損金算入できない」ということが明確に案内されている。
つまり、企業が土地貸借契約書、インボイス、その他の関連書類をすべて適切に整備し、かつ賃貸料をすでに支払っていたとしても、その土地が実際に事業目的で使用されていなければ、当該支出は損金算入として認められないことになる。
3. 実務上の留意点
実際に税務調査をサポートしてきたこれまでの実務経験に基づき、以下の事項について留意が必要であると考える。
・土地貸借料については、当該土地の使用を実際に開始した時点から、費用配分等の会計処理を行う必要がある
・税務調査は通常、税務局が発行するオフィシャルレターの案内に従って行われる。
・企業が土地を賃借していても、まだ建設に着手しておらず、当該土地を実際の事業活動に使用していない場合には、当該土地に係る賃貸料について損金不算入と判断される傾向があることに留意する
おわりに
実務上一部の土地が使用されていない状況は多いと思われる。既に賃貸料を支払済みの場合は仕方がないが、これから土地を賃借する予定がある場合には、事前に税務リスクを回避するために、適切な使用計画やスケジュールを立て、明確なプロジェクト実施スケジュールに基づいて土地を賃借することを推奨する。
またプロジェクトの実施が遅延している場合や、客観的な理由により土地の使用が開始されていない場合には、税務当局へ事前に問い合わせを行い、必要に応じてオフィシャルレターを提出し、税務上の対応等について確認されることを推奨する。
参考
2015年6月22日付け通達No.96/2015/TT-BTC
2014年6月18日付け通達No.78/2014/TT-BTC
2025年3月14日付け税務局発行のオフィシャルレターNo.140/CTTPHCM-TTHT号