2025年10月1日施行の改正法人税法の主な変更点
2026/02/12
はじめに
法令番号67/2025/QH15による新しい法人税法(以下「法人税法2025」)は、2025年10月1日から正式に施行され、2025年度の法人税計算期間から適用される。今回の改正は、税率体系の見直し、優遇措置の対象範囲の再整理、損金算入できる費用の拡大、損失通算の柔軟化など、企業の税務に直接影響する変更が多い。特に、デジタル経済の進展や中小企業支援、研究開発の強化など、近年の経済環境の変化を踏まえて制度設計が行われている点に特徴がある。本レポートでは、改正内容を以下の表に沿ってわかりやすく整理する。
1. 外国企業に対する課税範囲の明確化
| 法人税法2025 | ベトナム国内源泉所得がある場合、恒久的施設(PE)の有無にかかわらず課税対象とする。電子商取引などの場合、売上高に対する一定割合により税額を算定できる方法を導入。 |
| 旧規定 | この課税範囲についての明記はなし。 |
| 注記/影響 | 越境EC・プラットフォーム型事業の課税対象が明確化。税源確保と国内企業との公平性を図る政策意図がある。 |
2. 税率の変更
| 法人税法2025 | 前期売上高に応じた税率が適用される。 ・30億VND以下:15% ・30億VND超~500億VND以下:17% ・それ以外:20% |
| 旧規定 | 標準税率20%が基本。特定の税制優遇制度を除き、企業規模に応じた税率区分はなかった。 |
| 注記/影響 | 中小企業の税負担軽減が主目的 |
3. 優遇措置の対象範囲を変更
| 法人税法2025 | 〇 優遇税制の対象の一部を廃止 ・投資規模が6兆VND以上の生産プロジェクト ・工業団地内の投資プロジェクト〇 優遇税制の対象を追加 ・科学技術企業(2013年科学技術法) ・ハイテク企業およびハイテク応用農業企業(2008年ハイテク法) ・イノベーション活動 ・報道活動(2016年報道法に基づく新聞広告を含む) ・中小企業支援インフラ投資(技術施設、インキュベーション施設、スタートアップ向けコワーキングなど。2017年中小企業支援法) ・特別投資優遇の対象プロジェクト(2020年投資法第20条第2項に該当するプロジェクト) |
| 旧規定 | 優遇税制の対象には、以下の2つのグループが含まれる。 ・投資規模が6兆VND以上の生産プロジェクト ・工業団地内の投資プロジェクト |
| 注記/影響 | 従来のように「投資規模」や「工業団地内」を理由として広く優遇を適用する方式は見直され、技術革新・中小企業支援を優先する方向へ転換したことを意味する。 |
4. 損金算入範囲の拡大
| 法人税法2025 | 〇 法人税の課税所得を算定する際に、新たに損金算入が認められる費用が追加。 ・科学研究、技術開発およびイノベーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連する支出。 ・当期の収益を生まないが、生産・営業に役立つ支出(政府が定める要件を満たす場合) ・企業活動に関連する共用インフラ(道路・電力・給排水など)の整備費用 ・排出削減・環境保護・カーボンニュートラル推進を目的とする支出 ・首相決定に基づき設立された基金への拠出(規定遵守の場合) ・控除しきれない仕入VAT(以下の条件を満たす場合のみ) +還付対象でないこと。 +事業活動(生産・営業)に直接関連すること。 ※当該仕入VATを損金算入した場合、後から売上VAT控除に重ねて使用することはできない。〇 損金不算入とされる費用の範囲の見直し。 ・生産・事業活動のための借入において、貸し手が信用機関ではない場合、民法の上限金利を超える利息部分。 ・支出内容や手続きが関係法令に適合しない支出。 |
| 旧規定 | 生産・事業活動用の借入について、貸し手が銀行や事業会社などでない(個人など)場合、借入時点でベトナム国家銀行が公表する基準金利の150%を超える利息部分は損金不算入とされていた。 |
| 注記/影響 | ・還付の対象とならない仕入VATを損金算入できる点は、一定の事業形態において資金負担の軽減効果がある。 ・支出が関係法令に適合しない場合は損金算入が認められないため、税法だけでなく労働法や行政手続を含む法令遵守がより重要となる。 |
5. 損失の相殺
| 法人税法2025 | 企業は、事業活動間で柔軟に損失通算を行うことができる。任意で一方の事業の損失を他方の事業の課税所得から控除することが可能である。これには、不動産の譲渡、投資プロジェクトの譲渡、投資プロジェクトへの参加権の譲渡による所得も含まれる。
ただし、優遇税制の適用を受けている事業の所得と相殺することはできない。 |
| 旧規定 | 不動産の譲渡・投資プロジェクトの譲渡・投資プロジェクトへの参加権の譲渡による損失を事業活動の課税所得と相殺できる旨は定められていたが、逆にこれらの譲渡で得た課税所得を事業活動の損失と相殺できるかについては明確な規定がなかった。 |
| 注記/影響 | 複数の事業を持つ企業は事業間の財務構造を最適化しやすくなり、不動産の譲渡・投資プロジェクトの譲渡又は投資プロジェクト参加権の譲渡により利益が生じる場合でも、従来より法人税負担を軽減できる可能性がある。 |
6. 科学技術開発基金への積立金控除額
| 法人税法2025 | 研究開発のための基金を設立する場合、課税所得の最大20%までを控除して積み立てることを認めている。 |
| 旧規定 | 科学技術開発基金として積み立てることができる金額の上限は、課税所得の10%までであった。 |
| 注記/影響 | 新たな積立制度は、ハイテク分野の企業における研究開発(R&D)への積極投資を後押しするものである。これにより、企業は将来の成長に向けた技術投資を計画的に進めやすくなり、結果として新製品やサービスの創出につながることが期待される。世界的に技術競争が激化する中で、企業が自らの競争力を高めるための選択肢として注目される。 |
参考文献
2025年6月14日付け法人税法第67/2025/QH15号
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