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【労務】社内異動形態の外国人労働者への給与支払に関する内務省の見解
2025/12/04
2025年10月16日付の当社労務ニュースで案内したとおり、財務省が公表した法人税法の施行細則に関する最新の政令案では、母国企業が発行する正式な任命状がある場合、社内異動形態で勤務する外国人労働者について、ベトナム企業が労働契約を締結しなくても給与・賞与の費用を損金算入できる可能性が示されている。このため、労働契約を締結しないケースであっても、社内異動勤務形態の労働許可証を引き続き申請・維持し得るとの解釈が生じているが、当該政令は現時点では正式に公布されておらず、最終的な取り扱いは確定していない。
こうした状況の中、ベトナム日本商工会(JCCI)は本件について内務省へ意見書を提出し、これに対して内務省は、社内異動形態で派遣される外国人労働者への給与支払に関する見解を文書第1086/BNV-CVL号にて発行した。
本ニュースでは、同回答文書の内容を踏まえた当社の評価と、今後の実務に向けた推奨事項を整理する。
1. 内務省の意見
回答文書では、まず労働法における「労働関係」および「労働契約」の本質を改めて整理した上で、外国人労働者がベトナムで勤務する場合の類型を次のとおり区分している。
1.1 ベトナムで勤務し、かつベトナム法人から給与を受け取る外国人労働者
この場合、企業(使用者)は以下を履行する必要がある。
・勤務開始予定日の前に労働許可証を申請する
・ベトナム企業と労働契約を締結する
・ベトナムの社会保険法に基づき社会保険へ加入する
1.2 社内異動形態で外国企業からベトナムへ派遣される外国人労働者
この形態は政令第219/2025/ND-CP号に定義されている。
内務省は、上記の整理を踏まえ、「ベトナムで給与を受け取る外国人労働者」と「社内異動として派遣される外国人労働者」は、労働法(法番号45/2019/QH14)および関係法令において、性質の異なる二つの類型として明確に区分されているとの結論を示している。
以上から読み取れる内務省の見解は次のとおりである。
・ベトナムで給与を受け取る場合
当該外国人労働者とベトナム企業との間には労働関係が成立し、労働契約の締結が必要となる。そのため、労働許可証は「労働契約の履行」勤務形態で申請することが適切である。(これは、法人税法の政令案が労働契約を損金算入の要件とするか否かに関わらず適用される。)
・社内異動の場合
社内異動とは、外国企業が自社の従業員を一時的にベトナムへ派遣する形態であり、ベトナム法人から給与を受け取ることを前提としていない。したがって、社内異動勤務形態の外国人労働者に対してベトナム法人が給与を支払う運用は、労働関係の本質に適合しないと判断されるリスクがある。
2. 推奨事項
内務省の見解を踏まえ、労務面・税務面の双方で不要なリスクを避けるためには、企業が外国人労働者の勤務形態を適切に選択し、労働許可証の種類との整合性を確保することが重要である。
・社内異動勤務形態で労働許可証を取得する場合
ベトナム法人は外国人労働者と労働契約を締結せず、ベトナム国内で給与を支払わない運用とする必要がある。
・ベトナム国内で給与を支払う場合
「労働契約の履行」勤務形態での労働許可証を申請した上で、外国人労働者との労働契約を締結する必要がある。この場合、外国人労働者はベトナムの強制加入社会保険および強制加入健康保険の対象となる点に留意すべきである。
今後、関連法令の交付や行政実務に動きがあった場合には、次回以降のニュースレターにて続報を提供する予定である。
参考文献:
・政令第219/2025/ND-CP号
・文書第1086/BNV-CVL号


