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外国人労働者の「社内異動」勤務形態と給与支払いにおける重要な変更点
2025/10/02
これまでに配信してきたニュースに続き、外国人労働者の労働許可証の申請手続きを定める政令第219/2025/ND-CP号(以下「政令219」)における新たなポイントについて解説する。本稿では労働許可証に記載される勤務形態に関する新たな規定変更に焦点を当てる。
政令219は従来の政令第152/2020/ND-CP号(以下「政令152」)に代わり、2025年8月7日より施行されており、勤務形態に関する変更点は以下のとおりである。
・ 政令152の第2条第1項では、ベトナムで勤務する外国人労働者の勤務形態を「労働契約の締結」「社内異動」「業務委託契約」などと規定していたが、いずれか一つのみを選択するとの規定は設けられていなかった。
・ 一方、政令219の第2条第1項では「外国人労働者は、本政令に記載されたいずれか一つの勤務形態によりベトナムにおいて勤務する」と規定している。この表現変更により、外国人労働者は一つの勤務形態しか選択できないと解釈される。さらに、政府ウェブサイトにおける企業からの照会に対して、内務省が「社内異動の形態で勤務する外国人労働者は、ベトナム企業との間で労働契約を締結したり、給与を受け取ったりすることはできない」と回答している。
以上を踏まえると、政令219と内務省の見解に基づき、外国人労働者は一つの勤務形態しか選択できないという方向性が明確化されつつあると言える。
したがって、企業が「社内異動」の形態で労働許可証を申請取得する場合には、その外国人労働者とベトナム企業間では労働契約を締結せず、給与も支払わないことが前提となる。逆に外国人労働者と労働契約を締結し、ベトナムで給与を支払う場合には、最初から「労働契約の締結」の形態で労働許可証を申請する必要がある。
これは外国人労働者をベトナムに派遣する企業に対して大きな影響がある。今後は、「社内異動」形態の労働許可証を有する外国人労働者に対して、ベトナム企業と労働契約を締結して給与を支払うことは法令違反とみなされ、法人税上、その給与費用が損金不算入とされるリスクがある。
したがって、引き続き「社内異動」形態で労働許可証を申請する場合には、外国人労働者の給与はすべて本社が所在する外国で支払う必要があると言える。
一方で、ベトナム企業から引き続き給与を受け取る外国人労働者に対しては、「労働契約の締結」の形態での労働許可証の申請が推奨される。ただし、この場合は、ベトナムでの強制社会保険の納付対象となる点にも留意が必要である。
ベトナム企業労務および税務リスクを回避するため、今後企業が外国人労働者に労働許可証を申請する際は、勤務形態を慎重に選択する必要がある。今後も関連する最新情報が公表され次第、引き続き情報をお届けする。
参考文献:
・ 政令第152/2020/ND-CP号
・ 政令第219/2025/ND-CP号
・ https://d.bmb.jp/9/284/449/14988


