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【税務】2025年7月から輸出VAT還付のルールが変更に―政令181・通達69による主な改正点と実務への影響―
2025/07/17
2025年7月1日より、ベトナムにおける輸出取引に係る付加価値税(VAT)還付制が大きく見直された。今回の改正は、政令181/2025/NĐ-CPおよび通達69/2025/TT-BTCに基づいており、還付対象や手続きに関して、企業にとって重要な影響が生じる内容である。
本ニュースでは、改正内容と現場で対応すべきポイントを解説する。
1.輸出に係るVAT還付の新ルール
今後は、輸出取引により控除しきれなかった仕入VATが月または四半期で3億VND以上となる場合、月次または四半期単位での還付申請が可能となる。ただし、全ての輸出が還付対象となるわけではないため、以下の通り、取引内容に応じた判断が求められる。
分類 | 還付対象判定 | 補足 |
輸出に使用する原材料などの輸入(加工・製造目的) | 対象 | 従来通り還付可能 |
他国から輸入し、そのまま再輸出する取引 | 対象外 | 今回の改正により明確に除外 |
保税区域(例:工業団地)への輸出 | 判定不明 | 政令で明記なし。 税務局へ事前確認を推奨 |
還付額の上限は輸出売上の10%までという従来ルールが維持される。また、輸出と国内販売が混在する場合の還付額の算定方法については、通達69号の付録IIにて詳細に定められているため、個別の計算が必要となる。
2.VAT還付の共通する要件と追加された新規条件
基本的な還付要件は従来と大きく変わらないものの、今回の改正で書類面および申告状況の確認項目において、企業側が特に注意すべきポイントが追加されている。
還付申請時の主な共通条件
・ VAT控除方式を採用して、会計帳簿および証憑類を法令に基づき整備していること
・ 税コードに紐づいた銀行口座を有していること
・ 以下の輸出関連書類をすべて備えていること
必要書類(2025年改正後) | 改正ポイント |
売買契約書(または加工契約・サービス契約) | 従来通り |
VATインボイス | 従来通り |
非現金での支払証憑 | 従来通り |
輸出通関申告書 | 従来通り |
梱包明細書、運送状、保険証券(ある場合) | 今回の改正で追加 |
仕入れに関する条件
・ 仕入れに関するVATインボイスまたはVAT納税証明書を有していること
・ 5百万VND(税込)以上の仕入れについては、契約に定められた期限内に非現金で支払う必要がある。また、支払遅延がある場合、その取引は還付対象外となる。契約上の支払期日付の非現金決済支払証憑が取得できない場合、当該仕入インボイスが発生した課税期間に遡って、すでに申告済みの控除VAT額を減額修正する必要がある。
・ 仕入インボイスが、VAT法2024第13条に定められた禁止行為に該当していないこと
※この「第13条の禁止行為」には、実体のない取引に基づくインボイスの発行・使用、偽造インボイスの使用、インボイスの売買、非現金払い義務の違反、不正な還付請求などが含まれる。これらに該当する場合、当該インボイスは控除・還付の対象外となる。
新たに追加された要件(実務上の注意点)
還付を受けるには、仕入先(売り手)が該当期間のVAT申告を済ませ、未納がないことが条件となる。この要件により、買い手がいくら証憑を整備していても、当該インボイスに関しては売り手の申告状況によって還付が拒否される可能性がある。また、売り手の申告状況は税務局の内部データに基づいて判断されるため、買い手側では確認・管理が困難という課題がある。
3.企業が早急に準備すべき対応
今回の制度変更は、輸出企業に対して以下のような新たな事前確認・内部整備の必要をもたらしている。
・自社の輸出取引の内容(再輸出か、保税区向けかなど)と、還付の可否を明確化する
・関連文書(特に新たに追加された梱包明細書・運送状・保険証券)の整備体を構築する
・主要な仕入先について、VAT申告のタイミング・未納のリスク有無の確認方を検討する
・混在取引(国内販売+輸出)に該当する場合は、通達69号の付録IIをもとにした還付金額の計算ロジックを見直す制度の複雑化に伴い、早期の情報整理と税務当局との事前相談が、スムーズな還付のカギとなる。
参考文献:
・VAT法 第48/2024/QH15号
・政令 第181/2025/NĐ-CP号
・通達 第69/2025/TT-BTC号