Reportレポート

ファイナンスリースとオペレーティングリースにおける留意点

2025/04/27

  • Nguyen Duc Son

はじめに
製造業を営む企業にとって生産設備などの固定資産を購入するための資金集めは容易ではない。オペレーティングリースまたはファイナンスリースによる「資産のリース」は限られた資金でも設備を入手できる手段の一つである。本稿では、ベトナムにおける資産リースの定義や会計税務上の取扱い、また外国法人からリースする際の留意点について解説する。

1.ベトナムにおけるオペレーティングリースとファイナンスリースの定義

資産のリースはベトナム会計基準のVAS 6で定義されており、通達200/2014/TT-BTCで詳細が案内されている。VAS 6の基準によると、以下の通りである。
・資産の賃借: 貸主と借主の間で合意され、貸主が一定期間資産の使用権を借主に移転し、一回または複数回に渡り、貸付料を受け取ること。
・ファイナンスリース: 貸主が資産の所有権に伴うリスクと利益の大部分を借主に移転する資産の貸借。リース期間の終了時に所有権が移転する可能性あり。
・オペレーティングリース: ファイナンスリース以外の資産の賃借。

上記につき、通達200/2014/TT-BTCで以下のように補足されている。

ファイナンスリースとみなされるには、次の5つの条件のいずれかを満たす必要がある。
・リース期間終了時に、資産の所有権が借主に移転すること。
・リース期間開始時において、リース期間終了後にリース資産を市場価値より低い推定価格で購入する選択権を保有していること。
・所有権の移転は合意されていないが、契約時のリース期間が資産の耐用年数の大部分を占めていること。
・リース開始時点で、契約期間における賃料総額の現在価値がリース資産の公正価値の大部分を占めること。
・リース資産は借主のために調整されており、借主以外がそのまま使用することが難しいこと。

また通達45/2013/TT-BTCでは、ファイナンスリースにおける固定資産が以下のように定義されている。
 企業がファイナンスリース会社から借りている固定資産。リース期間終了時に合意した条件に基づき、借主は資産を購入する、あるいは継続してリースすることを選ぶ権利を有する。

財務諸表を作成する際には、VAS 06に基づき、借主はリース開始時点で当該リースがファイナンスリースかオペレーティングリースか確定させる必要がある。借主によるファイナンスリース資産とオペレーティングリース資産の財務諸表への計上方法および減価償却方法は以下の通りである。

ファイナンスリース資産:
・財務諸表の貸借対照表においてリース資産および対応する負債を計上する。
・非財務活動に関する初期費用(例: 交渉費用など)は資産の取得原価として認識される。
・ファイナンスリースに係る負債は、財務諸表上、短期負債と長期負債に区分して表示する必要がある。また、リース資産に関する賃料の支払は、利息費用と元本金返済費用に分けて処理する必要がある。
・借主は会計期間ごとにリース資産の減価償却費を認識する。リース資産の減価償却方法はその他の資産の減価償却方法と整合性を保つ必要がある。なお、リース期間終了後に借主が当該資産の所有権を取得することが確定していない場合、減価償却の期間は耐用年数またはリース期間のいずれか短い方を基準とする。

 オペレーティングリース資産:
・オペレーティングリースの賃料(資産に関するサービス料、保険料、維持費を除く)は、製作費用として認識し、原則としてリース期間に渡り定額法で計上する(より合理的な計上方法がある場合を除く)。

 

2.外国貸主に関する外国契約者税および中央銀行への外国借入の登録義務について

外国法人から資産をリースする際、外国契約者税(FCT)と外国借入登録に関して以下の点に留意する必要がある。

2.1外国契約者税(FCT)について
外国法人とリース契約を締結する場合、契約に別段の定めがない限り、ベトナムの借主は外国貸主に代わってFCTを申告・納付する義務を負う。

ファイナンスリース契約に適用される税率について、多くの企業は金融サービスに適用される税率と同様に「賃料の利息部分に対して法人税5%(VAT0%)」を適用している。しかし、実務上、通達45/2013/TT-BTC定義に基づき、税務局が賃料全額に対して法人税5%およびVAT 5%を課税するケースも発生している。

税務総局の2015年オフィシャルレター4765/TCT-CSでは、税務総局が通達45/2013/TT-BTCの定義を引用し、
“ファイナンスリース資産とはファイナンスリース会社から借りた固定資産である”と明記している。
つまり、外国法人がベトナムのファイナンスリース営業ライセンスを持っていない場合、FCTの計算においてオペレーティングリースとして扱われ、適用される税率が変わる可能性がある。そのため、慎重を期す場合には、外国法人とリース契約を締結する前に税務当局へオフィシャルレターを通じて見解を求めることが望ましい。

また、FCTは借主の財務負担を直接増加させる要因となる。一方で、国内ファイナンスリース会社の多くは輸入資産リースサービスを提供している。そのため、海外メーカーから設備や機械をリースする場合、輸入リースを活用する選択肢も検討すべきである。

2.2中央銀行への借入登録について
2024年の信用機関法では、ファイナンスリースは信用供与の一形態と定義されている。これにより、外国法人とのファイナンスリース契約は外国借入と同様に扱われ、登録および報告義務が発生する。

また、外貨管理に関する通達12/2022/TT-NHNH第14条では、ファイナンスリースを受ける借主は借入登録および借入変更手続きを行う必要があると規定されている。
加えて、借主企業は毎月5日までに外国借入に関する報告を行う義務があり、報告は中央銀行のウェブサイトを通じて電子提出が必要である。
一方、オペレーティングリースについては借入登録・報告の義務はない。

おわりに
本稿ではベトナムにおける資産リースの概要と関連規定、手続き上の留意点について解説した。銀行借入と比較すると、資産リースは多くの企業にとって資金調達の有効な選択肢となり得るものの、ベトナムでは依然として広く普及していない。資産リースの導入を検討する際には、本稿を参考にしながら、事前準備と確認を十分に行い、最適な活用方法を見極めていただきたい。

参考文献
・2002年12月31日付の決定文書165/2002/QĐ-BTC
・2014年12月22日付の通達200/2014/TT-BTC
・2013年4月25日付の通達45/2013/TT-BTC
・2022年9月30日付の通達12/2022/TT-NHNN

 

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